がんとは何か

ストレスでリスク上昇 「不幸はがんを呼ぶ」は本当だった

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 がんになるとされる要因は「喫煙」「飲酒」「食べ物や栄養」「運動不足」「肥満ややせ」「感染症」「化学物質」が一般的だ。その一方で「不幸はがんを呼ぶ」とも言う。精神的ストレスはがんにどう影響するのか?

 その答えになりそうなのが、「多目的コホートに基づくがん予防など健康の維持・増進に役立つエビデンスの構築に関する研究」の分析だ。

 国立がん研究センターが40~69歳の男女約10万人を対象に1990年から2012年まで追跡調査したもの。アンケートにより、6つの群に分けて長期的なストレスの変化とがん罹患との関連を検討した。

■肝臓は33%、前立腺28%、膵臓は26%アップ

 期間内でがんになったのは1万7161人。ストレスレベルが高い場合はすべてのがんで罹患リスクが高くなった。罹患したがんを臓器別にみると「肝臓」「前立腺」「膵臓」が多く、ストレスが高いとそれぞれ33%、28%、26%とリスクが上がった。また、女性より男性でその傾向が強く見られた。国際医療福祉大学病院内科学の一石英一郎教授が言う。

「ストレスを抱えた男性は喫煙や飲酒、暴飲暴食といったがんリスクの高い生活習慣に走る傾向があります。研究結果が統計学的な修正を行った上であってもその影響は残り、長期の自覚的ストレス=発がんリスクとはいえない部分もあります。それでも、発がんの引き金になることは間違いない。リスクはあるということでしょう」

 なぜ、長期の自覚的ストレスががんを引き起こすのか? そのメカニズムは明確にはわかっていない。ただ脳の扁桃体が不安や恐怖などのストレスを感じるとストレス反応が起こり、「コルチゾール」などのストレスホルモンが過剰に分泌され、記憶をつかさどる脳の海馬などの神経細胞の突起を変化させたり、自律神経を興奮させたりして脳の機能低下を起こしたり、心拍数が増えたり、血圧を上げたりする。その結果、うつ病などの神経疾患やアレルギー、脳卒中、糖尿病などの病気を引き起こすことがわかっている。

 脳の不調は消化器機能に影響を及ぼすこともわかっている。

 例えばストレスによって脳内の視床下部で合成されるCRFが増加、肝臓の生理作用を低下させることなどが報告されている。

「肝臓がストレスに弱いことは臨床現場ではよく知られた話です」

 また、動物実験では免疫機能の低下を通じて他の肝疾患を発症し、発がんに至ることが報告されている。肝がんは特にストレスの影響を受けやすいと考えられるという。

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