患者が語る 糖尿病と一生付き合う法

食事のタイミング15分遅れて低血糖を起こし意識がもうろう

平山瑞穂さん(C)日刊ゲンダイ

 今から思えば無謀以外の何物でもないのだが、僕はその時、デパートに浴衣を作りに行ったのである。15分かそこらで済むだろうと高をくくっていたのだが、とんでもない。浴衣を買うこと自体が初めてなので勝手も分からず、あれよという間に30分が過ぎてしまった。

 何も知らない店員さんが親切にあれこれと説明してくれるのをむげには遮れず、一通り聞き終えて支払いを済ませた時には、すでに注射してから45分が経過、目の焦点も合わなくなっていた。

 全身汗だくになりながら必死でレストランフロアを探し、どうにか「うどん」の文字を見定めた僕は、何も読めないメニューの一番上にある行を指さして注文、ほどなく出てきた何だか分からないうどんをむさぼり食って事なきを得た。

 これに懲りてからは、外食の際に無理につじつまを合わせるのは控えるようになった。

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平山瑞穂

平山瑞穂

1968年、東京生まれ。立教大学社会学部卒業。2004年「ラス・マンチャス通信」で日本ファンタジーノベル大賞を受賞。糖尿病体験に基づく小説では「シュガーな俺」(06年)がある。

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