がんとは何か

先進国ではダントツ 日本は感染症によるがんが多い国

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 胃がん、肝がん、子宮頚がん、成人T細胞白血病……。日本は先進国のなかで飛び抜けて感染によるがんが多い国だ。

 2003年に国際がん研究機構が発表したデータによると、感染症が原因でがんになる割合は、世界平均で約18%。先進国全体で約9%だったが日本は発展途上国の約23%並みの約20%だった。

 その理由は、注射針の使い回しによる肝がん、上下水道が完成されなかった時代に多く繁殖していたピロリ菌感染による胃がんが多いからだ。

 最近は性行為でうつるヒトパピローマウイルス(HPV)による子宮頚がんが注目されている。国際医療福祉大学病院内科学の一石英一郎教授が言う。

「がんがウイルスや細菌の感染によって発症するといっても風邪とは違います。直ちに発症するわけではなく、感染が引き起こす慢性的な炎症により、がんに有利な微小環境がつくられた結果としてがんが発症するのです」

 実際、HPV感染から子宮頚がん発症には数年から10年近い歳月が必要とされている。

「通常の炎症は治療の一過程であり、正常な状態であれば炎症反応は短期間で終了します。しかし、長期に持続する炎症は、その周囲にがんを促進させる炎症性の微小環境をつくり出すのです」

■予防効果の余地がある?

 がんが「癒えない傷」といわれるのはこのためだ。微小環境には発がんに関与するがん増殖因子、活性酸素・活性窒素などが集まっている。

 発がんに関連するのは細菌とウイルスだが、ウイルスには2つの種類がある。DNAウイルスとRNAウイルスだ。

「ヒトのような高等生物であれ、細菌であれ、細胞を持ち遺伝子情報(ゲノム)はDNAの中に納まっています。ところが、ウイルスには細胞がなく、遺伝情報がDNAであればDNAウイルス、同じく遺伝情報がRNAの形であればRNAウイルスになります」

 そもそもウイルスは、自身が生き残るため宿主細胞のタンパク質を乗っ取る寄生体だ。そのため
細胞分裂を進めて細胞増殖を促進させる。DNAウイルスには固有の発がん機構がある。そこでつくられたウイルス性タンパク質には、強力ながん抑制因子であるP53遺伝子やRB遺伝子を不活性化する働きを持つものがある。

 一方、RNAウイルスは、レトロウイルスとも呼ばれ、宿主細胞のDNAコピーなどを介してがん化させる。

「いずれにせよ、日本で感染症によるがんが多いということは、裏を返せば、感染症を抑えればがんは抑制できるということです。実際にピロリ菌除菌の普及により胃がん死亡者が減りつつあり、これががん予防に期待がかかり、声高に叫ばれる理由のひとつでもあるのです」

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