独白 愉快な“病人”たち

全盲ドラマー佐藤尋宣さん 網膜色素変性症との38年を語る

佐藤尋宣さん(C)日刊ゲンダイ

 わが家は友達のたまり場で、当たり前のように誰かがいました。彼らは平気で「これ、俺のだから食うなよ。名前書いといたから」と言って、お菓子を置いていったりするんです。こっちは「いや、(書いても)見えねぇし」ってなるんですけどね(笑い)。

■理不尽なことも「ネタになる」と考えれば面白い

 そんな環境だったので、人生を悲観することなく青春を謳歌し、10年前には結婚もできましたし、今3歳になる子供もいます。見えなくなって“これが大変”ってことはあんまりないですね。

 いや、いろいろあるんですけど「周りにこれだけたくさんの人がいるんだから、誰かが助けてくれるだろう」と思っています。いろんな人を渡っていく人生、こんな生き方もアリなんじゃないかなと。

 小学校の講演でも子供たちによく言うんです。「そもそも人は、ひとりで生きているわけじゃない。買い物はひとりでできても、会計は誰がするの? 商品は誰が作っているの?」ってね。ひとりだけで生きられないのは、誰しも一緒ですよね。

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