がんとは何か

がん3大治療のひとつ 「放射線」でがん細胞は死ぬのはなぜ

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写真はイメージ(C)PIXTA

 がんの3大治療法といえば「外科手術」「化学療法(抗がん剤)」「放射線」だ。最近は免疫療法を含めて4大療法といわれる。

「手術で悪性腫瘍を取り除く」「薬でがんを叩く」というのはイメージがすぐ浮かびわかりやすいが、放射線ががんに効くとはどういうことなのか? 国際医療福祉大学病院内科学の一石英一郎教授が言う。

「がんに放射線を照射すると、9割のがん細胞は分裂死します。細胞の染色体近くで電離作用を起こすからです」

 放射線とは「電離作用を持つ電磁波と粒子線の総称」のこと。電磁波とは電気と磁気を併せ持った波のことで、波長が長い物が電波で、それより短い物が光、最も短い物がγ線、X線だ。

 放射線はその通り道にエネルギーを与え、通り道の物質の電子をはじき飛ばす。これを電離作用という。X線にもこの作用がある。

「細胞の3分の2は水です。そのためがん細胞に放射線を照射するとがん細胞内の水の電子が叩き出されて、HプラスとOHマイナスに分解します。すると、電子を失って不安定になったOHマイナスがDNAから電子を奪って安定化しようとしたりします。その結果、がん細胞のDNAの塩基配列を狂わせたり、傷つけたりするのです」(一石教授)

 もちろん正常な細胞でも放射線を照射すると、同じようにDNAは傷つく。しかし、細胞修復機能が正常に働くことで修復される。がん細胞はこれが脆弱だ。

「そもそも、放射線に照射されるとがん細胞は正常細胞よりもDNAが傷つきやすいと考えられています。その理由のひとつにがん細胞が正常細胞に比べて細胞分裂のスピードが速いことが挙げられます」(一石教授)

 細胞が分裂、増殖するためにはDNAの2本のはしご状のらせん構造がほどけて、1本鎖になる。それをコピーすることで増殖がスタートするが、1本鎖のときに放射線が当たれば2本鎖の時よりもダメージは大きくなるからだ。

 ただし、DNAが傷ついただけでがん細胞がすぐに死ぬわけではない。傷ついたDNAが正しいタンパク質を作ることができないため、分裂時に死んでしまうのだ。

 しかも、死んだがん細胞はすぐに消えてなくなるわけではない。がんの塊はしばらくは残っていることが多い。

「死骸となったがん細胞は白血球の一種である貪食細胞が食べて処理していきますが、それには時間がかかります。そのため治療効果の判定のためのCTやMRI検査は、照射後2~3カ月後が良いとされるのです」(一石教授)

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