子供に多い脊柱側弯症 親が知っておくべき治療のポイント

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 脊柱側彎症は、脊柱がねじれ曲がる病気だ。多くは原因不明で思春期に発症し、その率は約100人に1人。男女比は1対9だ。今の小中学校なら3クラスに1人程度。親が知っておくべきことを聞いた。

 湘南藤沢徳洲会病院副院長の江原宗平医師は、同病院の脊椎センター・脊柱側彎症センターのセンター長も務める。脊椎手術のスペシャリストである江原医師のもとには脊柱側彎症の手術を求めて、全国から患者がやって来る。

「よくある質問は、『運動はできるのか?』『片方の肩にカバンをかけるのは良くないか?』など。カバンの持ち方などは過去には注意事項として挙げられましたが、やってはいけないことはひとつもありません」

 子供の脊柱側彎症は一般的に、学校の身体測定で見つかることが多い。脊柱の曲がり具合(側彎の程度)は人によって違い、進行度も違う。数カ月で急速に側彎の程度が進む人もいれば、そのままの状態を長く維持する人もいる。

 だから脊柱側彎症と診断された場合に重要なのは、この病気に詳しい医師の経過観察を受けること。成長期には最低でも4~6カ月に1度の受診が望ましい。

「側彎の程度が40~60度になれば、矯正手術を行います。第2次性徴を迎えていないお子さんでは、本格的な手術は第2次性徴期後半以降にし、簡易的に脊柱を伸ばすつなぎ的な手術を行います」

 手術前に特殊な装具をすすめる医師もいる。この効果については意見が分かれている。

「装具の説明はしますが、私は特にすすめません。手術までは何をしてもいい。ただ、手術のタイミングを見逃してはいけない」

 40~60度を超えても「様子見」のままで、90度や100度まで彎曲が進んでからようやく手術を検討する人もいる。しかし、江原医師によれば、側彎の程度が軽い方が手術もスムーズにいき、脊柱の形も正常に戻りやすい。また、手術内容の選択肢も増える。

■急速に進行するケースも

 現在、広く行われている手術法は、背中を20~30センチ切開し、脊椎の両側からチタン製のインプラントで矯正固定する「後方矯正固定術」。しっかりとした矯正ができるが、背中に傷が残る。

 一方、若い女性の患者が多いことから、傷がほとんど目立たない手術法として江原医師が開発したのが、内視鏡を使った小切開での「前方矯正固定術」。

 肋骨の間に7センチを2カ所切開し、インプラントを椎体へ入れて矯正する。固定力は“後方”より落ちるので、側彎の程度が65度を超えると適さない。さらに、曲がり具合によっても適さないという判断になる。後方、前方ともに、入院期間は10日ほど。子供では、夏休みや冬休みなど長期休暇に行うケースがほとんど。

「どちらも一長一短があります。ただし言えるのは、側彎の程度が40~60度の間で手術を検討すれば、傷が小さい前方矯正固定術ができる可能性もあるということです」

 術後は6カ月ほど運動はできないが、その後は、空手などの格闘技、器械体操、スノーボードなどの激しい運動以外、禁忌事項はない。テニス、水泳、ゴルフ、スキーなどはOK。また、リスクが高まる病気もない。

 脊柱側彎症を放置すると、見た目の問題に加え、後に呼吸や食事面での障害、逆流性食道炎や脊柱管狭窄症などを併発することもある。思春期で脊柱側彎症を発症したが、側彎はほとんど進まず、高齢になって側彎の程度が進み、手術になるケースも近年は増えている。

「80代でも手術は可能。しかも当院では、世界初のロボットアームによって術中に背骨の3次元デジタルデータを作成し、それをベースにインプラントを挿入する。位置なども正確に確認でき、安全かつ短時間で手術を行えます」

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