がんとは何か

放射線が効きにくいのは…塊が大きく細胞分裂しないがん

2人に1人はがんになる時代
2人に1人はがんになる時代(C)日刊ゲンダイ

 がんには放射線への感受性が高いものと低いものがある。高いのは細胞分裂を頻繁に行い、酸素濃度の高いがん。遺伝子情報が記載されているDNAは二重らせん構造で安定しているが、細胞分裂を行うときには、二重らせんがほどけて一本鎖になる。がん細胞のように頻繁に細胞分裂を起こしていると、不安定な状態で放射線を受ける可能性が高くなり、ダメージが大きくなる。

 酸素が豊富ながん細胞は活性酸素が多いため治療効果が高くなると考えられている。国際医療福祉大学病院内科学の一石英一郎教授が言う。

「がんの塊が小さいうちは細胞分裂が繰り返され、酸素も豊富です。そのためこの時期のがんは放射線感受性が高く、放射線治療の効果が高いとされています。逆にがんの塊が大きくなると、がんの塊の中心にあるがん細胞は低酸素状態となり、放射線感受性は低下していきます」

 その意味では、セミノーマ(精上皮腫)やウイルムス腫瘍(小児の腎臓がんの仲間)などは放射線の感受性は高いとされるが、骨肉腫や悪性黒色腫(メラノーマ)などは感受性が低いという。

 多くのがんは放射線治療はある程度有効だが、がんの中では扁平上皮がんのほうが腺がんより効きやすいとされている。腺がんの代表例は乳がんであるが、50グレイ程度の放射線を照射する乳房温存療法では、軽度の日焼け程度の副作用だけである。

 しかしながら、それ以上の放射線治療を行うと当然、副作用が生じる。

「皮膚の腫れや発赤、脱毛などのほか、吐き気や眠気が表れることがあります。さらに治療から半年から数年経って副作用が表れる『晩発性放射線有害事象』が起こる場合もあります」(一石英一郎教授)

 例えば「肺線維症」「放射線性心膜炎」「出血性膀胱炎」「出血性大腸炎」だ。これらは通常は無治療でも様子が見られることが多いが、重度の場合は高圧酸素療法や出血部の焼灼などが検討される。 

 放射線治療による副作用は、基本的に照射した部分にしか生じない。

 かつては放射線治療を受けると脱毛や白血病を発症するというイメージが強かったが、これは抗がん剤と一緒に使用することが多かったためだという声が、放射線治療医の中にある。

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