8カ月で患者数は3倍強「風疹」が急拡大で東京五輪が危ない

2年後は大丈夫?(建設中の新国立競技場)
2年後は大丈夫?(建設中の新国立競技場)/(C)日刊ゲンダイ

「風疹」の流行が拡大している。国立感染症研究所(感染研)が4日、直近1週間(8月20~26日)の患者数を発表したが、前週の2倍(84人)に急増していた。今年はすでに8月末までに273人(男215人、女58人)。昨年が93人だったから、8カ月で3倍に増えたことになる。最多は千葉の84人。これに東京(72人)、神奈川(24人)、埼玉(18人)が続いている。

 風疹は平均16~18日の潜伏期間を経て発症し、発熱や発疹、リンパ節拡張などの症状が出る。厚労省によると、インフルエンザより感染力が強く、国内では、2011年に378人だった患者数が、2年後の13年に1万4344人と38倍に急増したことがある。

「予防ワクチンを接種するのが一番効果的で、2回接種すればほぼ100%感染を防ぐことができます。ただし39歳以上の男性と56歳以上の女性は1度もワクチン接種を受けていない人が多い。発熱などの症状が出たら、すぐに病院に行くことをお勧めします。合併症の急性脳炎で死亡する危険性もあるからです」(厚労省結核感染症課)

 怖いのは妊婦の「先天性風疹症候群」だ。女性が妊娠中に感染すると、生まれてきた子供の心臓に奇形が生じたり、難聴、白内障の症状が出ることがある。医学博士の米山公啓氏が言う。

「家族に妊婦がいるとか、娘がまもなく結婚する場合は家族全員がワクチン接種を受けるべきです。マスク、うがい、手洗いでは感染を防げません」

 気になるのは感染研が「このまま流行が継続すると、東京五輪・パラリンピックへの影響が懸念される」と警告する緊急情報を出したこと。風疹は2年で患者が38倍に拡大する怖い病気。2年後の7~8月に開催される東京五輪の障害になる可能性も高い。

「外国人が来日を敬遠することも考えられるのです。風疹の流行は季節に関係なく、真夏でも次々と感染します。米国やヨーロッパのような“ワクチン先進国”は予防接種を積極的に行っているので安心でしょうが、アジアや東欧などには予防接種が浸透していない国も少なくない。そうした国の観光客が五輪見学に二の足を踏むのではないかと心配されます」(米山公啓氏)

 熱中症に次いで、またひとつ東京五輪の心配事が増えた。

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