性病じゃないが…パンツの中の“猛暑”が起こす病気と対処法

猛暑が続いたが…
猛暑が続いたが…(C)日刊ゲンダイ

 今年の夏は記録的な暑さが続いたが、体の中で最も暑かった場所といえばパンツの中ではないか? 中にはアソコがかゆくなり、人知れず悩んでいる人もいるはずだ。「パンツの中の酷暑」がもたらすかゆみには、どんな病気が潜んでいるのか? 弘邦医院(東京・葛西)の林雅之院長に聞いた。

「股間のかゆみというと、淋病や梅毒のような性病をイメージしがちですが、性病以外に股間がかゆくなる病気は、いくらでもあります。例えば性器カンジダです。酷暑などによる疲れやストレスなどで免疫力が低下。それが原因で口腔内などの常在菌であるカンジダ菌(真菌)が股間に繁殖して暴れ回り、デリケートゾーンがかゆくなる病気です」

 性器カンジダは肥満や糖尿病、幼児や老人のほか、抗生物質やステロイドなどを使用している人に目立つ病気だが、その構造上、とくに女性に多い。再発を繰り返すため、最近は腟カンジダの再発治療薬が市販されている。女優が「腟カンジダの再発は、自分でチェック、自分で治せる」と言うテレビCMを見たことのある人も多いはずだ。性交での感染は少なく、ほとんどが自己感染。性交経験のない女性でも発症する。

「男性は、包茎の人の方がなりやすく、亀頭に白いぶつぶつができる亀頭包皮炎を発症するほか、陰嚢に感染し、小さな嚢胞ができます。女性は、腟炎と外陰炎を同時に起こすことが多く、陰部にムズムズした不快感のほか、灼熱感や頻尿などの症状が表れます」

 夏にデリケートゾーンがかゆくなる病気といえば、インキンタムシも用心しなければならない。

「インキンタムシは正式には『股部白癬』と呼ばれる病気です。皮膚糸状菌(白癬菌)というカビの一種が股間に感染するもので、股間にかゆみがある場合にもっとも頻度が高い病気です。白癬は感染した場所によって診断名が変わります。足に感染すれば水虫ですし、腕や体に感染すればゼニタムシと呼ばれます。そのため水虫のある人はインキンタムシにもなりやすいといわれています」

 症状は脚の付け根、陰嚢の周りがかゆくなり、丸く環状に赤く紅斑が広がる。ただし、陰嚢には広がりにくい。

■素人判断で薬を使ってはいけない

 一方、陰嚢がかゆくなるのはタムシだ。正式には陰嚢湿疹という。湿疹は皮膚に炎症を起こす病気の総称で、原因は汗、植物、化学物質など多岐にわたる。このため原因を特定するのは難しいが、真夏に発症する中には汗による接触皮膚炎や脂漏性湿疹が考えられる。

「接触皮膚炎といってもパンツの素材と肌がこすれて発症するものばかりとは限りません。40代以上になると皮膚が薄く弱くなって、汗に含まれる成分が皮膚の刺激となってかゆみやかぶれを起こすことがあります。また、皮膚の穴から分泌される皮脂をエサにする真菌の刺激で炎症を起こす病気が脂漏性湿疹で、頭皮のかゆみやフケの原因として有名ですが、股間に発症することもあります」

 性器カンジダにしろ、股部白癬にしろ、湿疹にしろ、それ自体、命に関わる病気ではないが、アソコがかゆくなる病気の中には命に関わる病気があるので注意したい。

「外陰部パジェット病という皮膚がんの一種は股間がかゆくなるケースがあります。男性は女性の2~3倍の発症率で、60歳以上によく見られる病気です。アポクリン腺と呼ばれる、においの元となる汗腺がある肛門や脇の下などで発症するとされますが、多くは陰部に発症します。陰部の広範囲に赤みやびらんが広がります。鑑別のポイントは、皮膚が白っぽくなる脱色素斑があることです」 

 では、股間のかゆみが出たら、どのように対処したらいいのか? 

「トランクスのパンツをはくなどして風通しを良くすることです。陰部にすみついた菌は湿度とともに大繁殖してかゆみを起こします。陰部を乾かすことです」

 このとき間違っても思い込みで薬を塗ってはいけないという。

「湿疹だと勝手に判断して薬局にすすめられるままに皮膚の炎症を抑えるステロイドの塗り薬を使用する人がいますが、やめてください。股部白癬症に必要なのは、水虫と同じ抗真菌剤です。股部白癬症かどうかの見極めは皮膚科専門医であっても顕微鏡を使わないと難しい」

 パンツの中のトラブルは、恥ずかしいからといって素人判断してはいけないのだ。

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