2018年 がん最前線

白血病なら160万円 入院期間と使用薬でがん治療費は変わる

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写真はイメージ(C)PIXTA

 10年間の闘病生活の末に亡くなったさくらももこさん(享年53)は、国民的な漫画家だ。下世話な話になるが、サラリーマンの数十倍、数百倍は稼いできた。保険適用外の先進治療も可能だっただろう。それでも病を克服できず、若くして命を落としている。

「たとえ自由診療の先進医療に何千万円も掛けたとしても、がん治療は必ず効果が見込めるわけではありません。保険が適用される標準的な治療で回復できた人もいれば、先進医療を施しながら命が尽きてしまう人もいます。残念ながらがん治療には、運とタイミングが大きく左右するのです。そもそも毎年欠かさず検診していても100%の確率でがんを発見できるわけではないですし、たまたま検査したときに初期のがんが見つかって助かることもあります。抗がん剤も種類によって合う、合わないがある。それだけに難しいのです」(長浜バイオ大教授・永田宏氏=医療情報学)

 こうなると人間の力が及ばない領域になってしまうが、がんはどこにできるかで、かかる治療費も違ってくる。

 別表は厚生労働省の医療給付実態調査(2016年度版)をもとに本紙が算出した平均費用と自己負担の金額だ。

■食事・生活療養費は20万円強

 それによるとケタ違いに高いのが白血病である。100万円を軽く超え、自己負担額も50万円に迫る多さだ。

「白血病は、どうしても入院期間が長くなります。平均で2カ月ぐらい。それだけに費用も掛かってしまうのです。ほかでは、結腸のがんも入院は3週間ぐらいに及びます。2週間ぐらいで済む胃がんより費用が高いのは、その違いでしょう。手術代で極端に差が出ることはありませんからね」(永田宏教授)

 肺がんが少し高いのは、新薬の影響が考えられるという。15年12月、新しいタイプのがん治療薬が肺がんの標準治療に使えるようになった。免疫の働きにブレーキがかからないようにする「免疫チェックポイント阻害薬」のオプジーボがそれだ。

「オプジーボは1カ月の治療費が300万円という高価な薬です。現在は半額になりましたが、調査した当時は、この新薬を使ったケースが含まれるでしょうから、ほかのがんよりも費用が高く出ているのかもしれません。ただ、胸を開ける手術は、お腹を開けるよりも手術代は少し高くなるので、その影響も考えられます」(永田宏教授)

 むろん高額療養費制度を利用すれば、毎月の支払いに上限額が適用されるので、自己負担の金額は表よりも少なくなる可能性は高い。上限額は、年収770万円以下なら、8万100円+(治療費―26万7000円)×1%で計算される。仮に月の治療費が100万円とすれば、自己負担額は8万7430円だ。

 ただし、入院した場合は、治療費のほかに食事代や生活療養費(光熱費など)が請求される。前出の医療給付実態調査によると、その金額は平均20万円ほど。さらに病院によっては差額ベッド代も必要だ。

「がん治療で破産した人はいない」といわれるが、決して安くはないのが現実である。

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