患者が語る 糖尿病と一生付き合う法

ある深夜にイライラし絶叫…原因は低血糖による錯乱だった

平山瑞穂さん(C)日刊ゲンダイ

 すでに寝ていた妻が血相を変えて、「どうしたの?」と駆けつけてきた。脳内の一部だけが冷静で、「ああ、この姿は彼女からは異常に見えるはずだ」と思った。それでいて僕は衝動を抑えることができず、なおも叫び続けた。恐怖のあまり取り乱している妻の目の前で。

 5分ほどすると僕の中のイライラは収まってきて、やがて平常の状態に戻った。後日、主治医に報告すると、あっさり「ああ、錯乱だね」と言われた。

 補食はしていたものの、それが血糖値を十分に上げるまでに時間がかかっていて、その間に軽度の意識障害が起きていたらしい。放置していれば昏倒に至る状態だ。

 恐ろしい体験だったが、おかげで「異常な言動」の何たるかが分かったという面はある。

 ただ、案じていたとおり、「異常な言動」をしている渦中の僕自身は、それに気づくことができない。

 それ以降はもっぱら妻が僕の言動に気をつけ、ちょっと怪しいと思うと即座に「低血糖になってない?」と注意を促すようになった。

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平山瑞穂

1968年、東京生まれ。立教大学社会学部卒業。2004年「ラス・マンチャス通信」で日本ファンタジーノベル大賞を受賞。糖尿病体験に基づく小説では「シュガーな俺」(06年)がある。

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