2018年 がん最前線

FPに聞いた がん保険は何歳でどんな保障を選ぶのが正解か

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 最終回は「がん保険」について考えたい。がん死亡者は年間37万人(2016年調査)を超え、罹患率は男性62%、女性は46%にのぼる。イザという時の保障は、いつから考え、どの程度の備えが必要なのか?

「いい機会ですよ~」

 就職、結婚、子どもが生まれた――。こんなとき、生保のオバちゃんたちは口を揃えてこう言ったものだ。生命保険勧誘の常套句である。

 がん保険は、何がキッカケになるのだろう。

 ファイナンシャルプランナーの関口博美氏がこう言う。

「がん保険の場合は、年齢的に病気そのものに不安を感じたり、がんにかかることで収入が減ることを強く意識したとき加入を考えるはず。男性と女性では女性の方が若い年齢で加入しやすい。女性特有のがんは、40代での発症が珍しくありませんから」

 乳がんや子宮がんの罹患率は45歳すぎから急カーブで上昇する。先日、乳がんで亡くなった漫画家・さくらももこさんは、53歳だった。

 男性はどうか。がん罹患率は60歳前後から急上昇。患者数がドッと増える、“がん年齢”世代である。一方、サラリーマンの定年は60歳。65歳まで雇用延長は進むが、給料は大幅に減る。こんな状況でがんになったら、虎の子の退職金を取り崩すしかない。50歳になったら早々に保険で備えるのが賢明な策か。

■“加入しない”という選択肢もある

 マネー雑誌やネット上で「がん保険」をチェックすると、各社、保障内容も診断給付金や入院給付金も微妙に差があって、どれが得か分かりにくい。商品選びの基準は――。

「まず、単体のがん保険を選ぶこと。医療保険に特約を付けるより単純に保障内容が手厚いからです。次に診断一時金、通院給付金など、どの保障を重視するか? がんと診断された時にもらえる診断一時金が手厚い商品は、入院中の治療費や生活費もカバーできるので、これをメインに考える人は多い。また、抗がん剤に対する給付があるなど、治療法の対応も判断基準でしょう」(関口博美氏)

 最近は先進医療をカバーする商品も注目だ。先進医療は先進性が高い医療技術だが、公的保険制度の対象外で全額自己負担。大手A社のHPでは、その技術料(治療費)は陽子線治療276万円、重粒子線治療309万円とあった。それを同社の商品は条件付きで通算2000万円までカバー。心強い味方になるかもしれない。

「がん保険に入らない」選択肢もある――。こう言うのは、経済ジャーナリストの荻原博子氏だ。

「サラリーマンの健康保険はがんでも心筋梗塞でも医療費は3割負担です。仮に100万円の治療を受けても30万円で済む。高額療養費制度を使うと、ごく一般的な収入のサラリーマンなら自己負担額は月に9万円弱ですし、4カ月目からはさらに減額されて4万円ちょっとに。では、がんで手術して10日間、入院したとしましょう。当然、がん保険から手術給付金、入院給付金がもらえます。でも、30歳でがん保険に加入して60歳でがんになった場合、支払った保険料分、元が取れるとは思えません」

 先進医療の特約も「月々100円で入れる保障なんてものすごく確率が低いという裏返しです」とひと言でバッサリ。

「私はがん保険は単なるお金の問題だと思う。入っているからならないわけじゃないし、入ってない人は治らないわけでもない。少なくともがん罹患率が低い40歳前は全く入る必要がない。がん家系の人は別ですけど。私だったら、保険料分を貯金に回すか、どんな病気でもカネが出る保険を選びますよ」(荻原博子氏)

 しっかり考えることだ。

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