前回お話ししたように、将来は病気になっても今までのように簡単には入院させてもらえそうにありません。とはいえ、「手術代をカバーできることを考えれば、民間の医療保険に加入する意味はある」と考える人もおられるでしょう。
しかし、その考えも改める必要があります。
実は「手術が受けられない時代」が近づいているからです。
20世紀には、後期高齢者に大きな手術を行うなど、めったにありませんでした。ところが今では90代以上の大手術も珍しくなくなってきています。腹腔鏡手術やロボット手術など、技術の進歩が可能にしたのです。
「それならなおのこと医療保険は必要ではないか」と思われるかもしれません。しかし、それは外科手術を受けられる場合に限っての話です。
実は、手術を担うべき外科医が一向に増えていないのが現状です。毎年約9000人の新人医師が巣立っているのですが、その中で外科を志望するのは1割に満たないといわれています。肉体的にも精神的にもきついうえに、訴訟リスクも高いため、敬遠されているのです。

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永田宏
長浜バイオ大学コンピュータバイオサイエンス学科教授
筑波大理工学研究科修士課程修了。オリンパス光学工業、KDDI研究所、タケダライフサイエンスリサーチセンター客員研究員、鈴鹿医療科学大学医用工学部教授を歴任。オープンデータを利用して、医療介護政策の分析や、医療資源の分布等に関する研究、国民の消費動向からみた健康と疾病予防の解析などを行っている。「血液型 で分かるなりやすい病気なりにくい病気」など著書多数。