脳や心臓にも負担が…秋の「寒暖差」が招く体調不良

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 暑い日が続いてきたが既に9月も半ば。そろそろ空気が冷たくなる季節だ。そこで気をつけたいのが「寒暖差」。前日より気温が5度以上下がると、体内では体温調節に膨大なエネルギーが取られるために、疲れやすくなるばかりでなく、脳梗塞や心筋梗塞などの血管病発症リスクも高くなるという。「北品川藤クリニック」(東京・品川)の石原藤樹院長に聞いた。

 今月8日に福岡県の公立高校の体育祭で生徒36人が低体温症で病院に担ぎ込まれた事件に驚いた人も多いだろう。原因は5度を超える寒暖差にあった。福岡県では9月に入っても暑い日が続き、前日の気温は29.5度。ところが、生徒たちが不調を訴えた当日の午前10時の気温は23.1度までしか上がらなかった。

「生徒たちは低い気温の中、雨に濡れたまま運動を続けたことにより低体温症になったのですが、運動をする前から疲労感があったはずです。5度以上の差は肌が明確に感じるほどの温度差であり、体は寒さから身を守るために体内では活発に体温を上げ、体温を逃がさないために多くのエネルギーが使われるからです」

 気温の急激な変化による疲れを「寒暖差疲労」という。体の冷え、めまい、肩こり、顔のほてりなどさまざまな不調の原因になることがある。前日との気温差が5度を超えると「寒暖差疲労」の症状が表れやすく、「暑いときは何でもなかったが肌寒さを感じてから疲れが出て、ひどいとなかなか起き上がれない」と訴える人もいるという。

 人は体内や細胞内の酵素反応を適切に行うために、体温を36度前後に保っている。体温調節機能の中枢は間脳視床下部にあり、感覚神経からの情報や間脳視床下部に流れ込んだ血液の温度を感知して、適切な温度を保つよう、体の各部に温度調節の指令を送っている。

「暑いときは副交感神経が皮膚の血管を開いて体の熱を逃がし、気温が下がって寒さを感じると交感神経の働きにより皮膚や血管、立毛筋を収縮して外部環境に接する面積を減らし、体温を奪われにくくします。さらに筋肉の震えや血糖量を上昇させるホルモンやチロキシンの働きで細胞の呼吸や代謝が活性化され、発熱が促進されるのです」

 実際には5度の気温差に風や湿度が加わるために体内でのこうした活動はさらに激しさを増す。体の機能だけでは気温差に対応できなくなると、温かい飲み物を取るなどして徐々に体を寒さに慣らしていく。しかし、慣れないうちに気温差5度以上の変化が頻発すると健康な人でも一時的に体調を崩すという。

「気温への対応がスムーズでない糖尿病や高血圧など持病のある人であれば、それをキッカケに本格的に体調を崩すことにもなりかねません。体からの放熱を防ぐため血管が収縮すると血圧が上昇するため、高血圧の人は特に注意が必要です。寒暖差が大きくなると、心筋梗塞や脳卒中などの血管病のリスクが高くなります」

 寒暖差は朝晩に咳や鼻水が出る、顔がムズムズするといった寒暖差アレルギーを発症させる可能性もある。

 血管運動性鼻炎と呼ばれることもある。

「風邪に似た症状がありますが風邪ではありません。風邪のように細菌やウイルスが感染したわけでも花粉症のように特定のアレルゲンに反応するわけでもないのです。寒暖差により、血管収縮がうまくできなくなることで症状が出ます。そのため風邪による鼻水は黄色や緑色をしていますが、寒暖差アレルギーのそれは無色透明なのです」

■対策は体を内側から温める

 寒暖差による体調不良が起きるのは前日に比べて最高気温や最低気温が変化するだけじゃない。同じ日でも朝晩で大きく異なったり移動場所によって違ったりすると、症状が表れる。寒暖差リスクが高い人は暑さ・寒さが苦手、熱中症になったことがある、季節の変わり目に体調不良を起こす、クーラーが苦手、手や足が冷たい、常にエアコンをつけて温度が一定の環境に長時間いる、体がむくみやすいなどの人だ。

「要は寒暖差による体温調節が苦手な人ということです。心当たりのある人は、早めに上着を羽織るなどして体を冷やさないようにするのは当然ですが、体の内側から温めるために体を温める食材を取るようにすることです。たとえば、ニンジン、タマネギ、レンコン、カボチャ、ショウガなどです。レタス、キュウリ、トマトなどは体を冷やす食材なので避けた方がいいかもしれません。また、激しい運動は必要ありませんが、ウオーキングや全身のストレッチなど体を動かすことも大切です。お風呂は、38~40度程度のぬるめのお風呂に10分程度入るのが良いとされています」

 9月に入っても暑い日が続いているからこそ、急な寒さへの備えが必要なのだ。

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