Dr.中川のみんなで越えるがんの壁

米国で胃がんは“過去のがん”…日本では罹患数2位の理由

がん克服の会見をする高杢禎彦さん(C)日刊ゲンダイ

 日本も恐らくは30~40年後は、米国のように胃がんが「過去のがん」になります。そうなれば、胃がんを恐れる人は少なくなるはずですが、では日米の違いはどこにあるのでしょうか。

 ピロリ菌です。胃がんの発症原因は、98%がピロリ菌感染で、上下水道の普及率が悪いところで高い傾向があります。米国では、19世紀にほぼ民間水道でしたが、日本の上水道普及率は1950年で約3割でした。

 日本も今では上下水道が整備され、冷蔵庫が普及。新鮮で清潔な食べ物を口にするようになったため、20歳以下の感染者は欧米並みの2割に低下していますが、60代以上は8割に上ります。中高年の高いピロリ感染率が日米の差に反映されているのです。

 日本で胃がんは“目の前の敵”だけに、対策が欠かせません。その基本がピロリ菌の除菌です。感染の有無が分からなければ、検査を受けて、感染していれば、できるだけ早いうちに除菌すること。佐賀では、中学生が除菌を受けています。

2 / 3 ページ

中川恵一

中川恵一

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。

関連記事