そして、午後2時になり、F医師から告げられます。
「膵臓がんが尾部にできていて、胃と腎臓に接しています。手術は無理だと思います。余命はあと6カ月、長くて1年と思ってください」
突然のことにMさんは頭が真っ白になりました。「あと6カ月」という言葉だけが頭の中を駆け巡り、その後はF医師の説明など何も耳に入らなくなっていました。覚えていたのは、最後に「Gクリニックに紹介状を書いておきます。娘さんには私から電話で説明しておきます」と言われたことくらいです。
自宅に戻ったMさんは、自分で作ったキュウリ、ナス、トマトのいつものおいしい味がまったくなくなってしまい、ただガリガリとかじっているだけになったことに気づきます。畑仕事も、本を読む気もなくなっていました。
2日後、娘さんから電話がかかってきました。「お父さん、大丈夫? F先生が電話で手術は無理だし、抗がん剤は人間の尊厳をダメにする。Gクリニックに行って、緩和ケアが一番いいと言っていた。今度、仕事を休める日に行くから、元気出してね」
がんと向き合い生きていく