寿命に直結しかねない病気ゆえ リウマチ治療最前線を知る

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 患者数70万~100万人、30~40歳代に多く発症するのが関節リウマチ(以下、リウマチ)だ。この30年で治療は劇的な進歩を遂げたが、適切な治療を受けられていない患者もいる。専門医に聞いた。

 リウマチは、免疫機能の異常で正常な組織が攻撃される病気だ。女性によく見られ、男女比は1対4.5。症状は、こわばり、関節の腫れ、痛み、体重減少、体力低下、倦怠感などがある。

「リウマチによる関節炎がひどいと、普通の生活や仕事ができません。関節の破壊は発症早期に進行し、元に戻りません」(産業医科大学医学部第1内科学講座・田中良哉教授=以下同)

 関節の破壊・変形が進行すると、シャツのボタンを留めるなどの日常の生活動作が難しくなる。患者の30%以上が、診断後に離職したか仕事を変えているとの報告もある。さらに進行すれば、全身の症状を伴い、寿命にも直結しかねない。

 しかし現在、適切な治療によって、リウマチでない人とほぼ変わらぬ生活を送ることができる。だからこそ、リウマチを疑う症状が出てきたら、すぐに病院へ行くべきだ。

 最も典型的な症状は「朝のこわばり」「関節の腫れ、痛み」だが、冒頭に挙げたほかの症状もある。腫れや痛みは同じ場所に限らず、移動する場合もある。非典型的な症状でもリウマチと速やかに診断されるためには、専門医を受診した方がいい。

■効果が高い薬の継続投与でほとんどが寛解

「リウマチと診断されると、関節の破壊が起こる前にリウマチ治療薬メトトレキサートの投与を開始します。十分量を使用すれば5~6割が寛解(症状が一時的に軽減した状態)に至ります。駄目なら、生物学的製剤あるいはJAK阻害剤を投与。6カ月で効けばいいですが、駄目ならいずれかの薬をとっかえひっかえ使い、最も効果が高い薬を継続投与します。これでほとんどの方が寛解し、関節の破壊が起こりません」

 生物学的製剤は炎症に関係する因子サイトカインを細胞外でブロックして細胞に炎症を起こす刺激が入らないようにする薬。

 一方、JAK阻害剤はサイトカイン受容体からの刺激を伝えるJAKという酵素を阻害して、炎症を抑制する薬だ。

 田中教授の診療科の患者3000人が登録し、生物学的製剤を導入可能かどうか入念にスクリーニングを行った後、生物学的製剤の治療を開始。1年後に再検査を行ったところ、約3分の2で症状が軽減したが、残りは中程度の症状が残った。JAK阻害剤は、メトトレキサートや生物学的製剤で効果が不十分だった患者でも関節破壊を抑制するという研究結果が出ていることから、今後に期待を寄せている。

「生物学的製剤は点滴か注射でしか使えませんが、JAK阻害剤は内服が可能。生物学的製剤を含むリウマチ治療を行っている914人を対象にした調査で、75.8%は内服薬を好むとの結果が出ています」

 JAK阻害剤は2013年承認の「トファシチニブ(商品名ゼルヤンツ)」と、17年承認の「バリシチニブ(同オルミエント)」がある。実は、トファシチニブは効果の高さは確認されていたものの、悪性腫瘍の発症を高めるのではないかとの懸念から、積極的に処方されてこなかった。

 しかし、安全性を確認する調査を、投与中止症例も含む使用者全例(3929例)を対象に3年間の追跡調査を実施。中間解析では、悪性腫瘍の発症率に関して、高くならないことが判明した。

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