人生100年時代の保険術

終身死亡保険は損 元金割れする積立定期預金のようなもの

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 あなたは人生100年時代を乗り切るために、どんな準備をしていますか。年金と貯金と退職金だけで、何とかなりそうですか。

 サラリーマンは60歳でいったん定年。65歳まで延長できる会社も増えてきていますが、給料はガタ減りです。

 その先30年間、夫婦2人、毎月25万円で生活するとしても、約9000万円の資金が必要になります。しかもその間には、家電の買い替えや家の修繕、さらにどちらかが要介護になることもあるはずです。それらを含めれば、1億円でも足りるかどうか。

 そのうちの何割かは、年金で賄えるでしょう。ただし、いま約束されている金額よりも、かなり少なくなる可能性が高そうです。しかも、支給年齢も後退しそうです。そんな不安にあおられてか、終身死亡保険や養老保険に加入する人が増えています。

 しかし、終身死亡保険なんて、元金割れする積立定期預金のようなものです。うまく60歳か65歳ぐらいまでに死ねれば、確かに大きな保険料をもらえます。しかしそれを越えると、いままで払った保険料の合計よりも少ない額しかもらえません。なにしろ終身ともなれば、死亡率は100%なのです。しかも保険会社が自分たちの利益と手数料をもっていきます。子供でも分かる理屈でしょう。

 早い話が、「安心」の2文字にだまされて、わざわざ金を目減りさせているだけの話です。リスクの低い投資信託や「つみたてNISA」に投資するほうが、資産運用としては、ずっとまともです。

 それにその保険金、誰に残すつもりですか。まさか還暦を越えた息子や娘に残すつもりではないでしょうね。

 結局、老後資金が心配な人は、定年後も働くしかないのです。これからは、人工知能のサポートを受けながら、知的な仕事を続けることも可能な時代になっていきます。HALのようなパワードスーツの助けを借りれば、肉体労働もこなせます。

 ただし、働き続けるためには、健康でいることが第一です。もちろん配偶者の健康も重要です。要介護の妻を抱えながら仕事を続けるなんて、ほとんど無理。夫婦ともに健康であることが、仕事人生を延長するうえで、欠かせない条件になってくるのです。

永田宏

永田宏

筑波大理工学研究科修士課程修了。オリンパス光学工業、KDDI研究所、タケダライフサイエンスリサーチセンター客員研究員、鈴鹿医療科学大学医用工学部教授を歴任。オープンデータを利用して、医療介護政策の分析や、医療資源の分布等に関する研究、国民の消費動向からみた健康と疾病予防の解析などを行っている。「血液型 で分かるなりやすい病気なりにくい病気」など著書多数。

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