人間の健康状態は、生活習慣などの環境的な要因だけでなく、両親から受け継いだ遺伝的な要因によっても変化します。がんや糖尿病の発症が、生活習慣のみならず、親の遺伝的影響を受けていることはよく知られています。
では、親が健康で長生きしている場合、その子供も長生きするものなのでしょうか。そんな疑問に答えるような研究論文が、老年医学に関する専門誌の電子版に2018年8月15日付で掲載されました。この研究は1993~98年の間に被験者登録された2万2735人の女性を、2017年まで追跡調査したものです。
解析の結果、母親が90歳以上まで生存していた女性では、70~79歳まで生存していた女性に比べて、心臓病、脳卒中、糖尿病、がん、骨折などの深刻な健康問題を抱えていない人が25%多く、90歳までの死亡リスクも25%低いことが示されました。また、父親が90歳まで生存していた女性では、70~79歳まで生存していた女性に比べて深刻な健康問題については差がありませんでしたが、90歳までに死亡するリスクは21%低下しました。特に両親ともに90歳以上まで生存していた女性では、そうでない女性に比べて深刻な健康問題を抱えていない人が38%多く、90歳までに死亡するリスクが32%低下することが示されています。
両親が長寿であった女性ほど長生きする可能性が示されていますが、健康長寿が遺伝するかどうかについては議論の余地があります。長生きをするような家庭では健康問題に関心が高く、健診や予防接種など予防的な医療を積極的に受けてきた可能性が高いからです。
環境的要因と遺伝的要因が、加齢に伴う健康状態に対してどの程度影響し合っているのか、今後の研究報告に注目です。
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