天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

ベトナムは若手医師のモチベーションを上げてくれる

天野篤氏(C)日刊ゲンダイ

 上下水道が整備され、清潔な食べ物を口にするようになるなど公衆衛生が整い、胃がんの原因となるピロリ菌の感染が減っている日本では、世代が若くなるほど胃がんがほとんど見られなくなっています。それに伴い、いまの医学生や若い医師は実際に胃がんを診たり、手術をする機会も減っているのが現状です。

 ベトナムで見られる胃がんは進行がんが多いことと、医療費の関係から日本のような腹腔鏡手術や抗がん剤治療は縁遠いため、いまの日本では減っている通常の手術を学ぶことができ、若い外科医にとって大変勉強になります。胃がんについて、いくら教科書で勉強しても「百聞は一見にしかず」で、実際に自分の目で見て症例を経験しなければ身になりません。だからこそ、医学生や若手医師をベトナムに派遣し、いまの日本では経験できなくなっている病気に触れる機会をつくりたいと考えているのです。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。

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