すると、医学生や若手医師の知識や経験も終末期や介護といった“お年寄りの病気”に関係するものに偏ってしまいます。たしかにそれも大切ですが、医療従事者として暗い気持ちになることも事実です。いまの日本では、「働き盛りの患者さんの病気を治して、無事に社会復帰する手助けをする」といったモチベーションが上がる医療活動が減ってしまっているのです。
われわれが若い頃は、そこまで高齢化が顕著ではなかったこともあって、医師としてのやりがいや充実感を感じながら医療活動に従事することができていました。しかし、いまの医学生がこれから医師になったとして、果たしてそうした充実感を感じることができるのだろうか……そんな危機感を抱いています。
だからこそ、われわれの世代の医師は、若手が高いモチベーションを持って医療活動に携われる場所を探してあげなければなりません。そしてそれは、ベトナム、中国、インドといった日本に比較的近いアジア諸国にあるのではないかと思うのです。
天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」