患者が語る 糖尿病と一生付き合う法

映画の糖尿病患者は事実とかけ離れた頓珍漢なものばかり

平山瑞穂氏(C)日刊ゲンダイ

 どう考えてもつじつまの合わない場面である。

 まず、1日や2日インスリンが打てなかったからといって、ぐったりするなんてことは、ほとんど考えられない。

 血糖値が上がり過ぎれば、糖尿病性ケトアシドーシスと呼ばれる重篤な症状を示す場合もあるが、糖尿病患者がぐったりするとすれば、どちらかというと低血糖が原因だろう。

 インスリンが打てない状態にあるのに低血糖を起こすことはありえないし、逆にもしも彼女が糖尿病性ケトアシドーシスでぐったりしているのだとしたら、その上さらに糖分を補給するなどもってのほかである。

 これに類する場面を、僕は国内外の映画で少なくとも5回は見ている。インスリンが、高すぎる血糖値を下げるための薬なのだということさえきちんと理解していれば、こんな描写になるはずがない。見ていて一気に感興をそがれないためにも、もう少しきっちりウラを取っていただけないものかと思う。

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平山瑞穂

平山瑞穂

1968年、東京生まれ。立教大学社会学部卒業。2004年「ラス・マンチャス通信」で日本ファンタジーノベル大賞を受賞。糖尿病体験に基づく小説では「シュガーな俺」(06年)がある。

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