人生100年時代の保険術

万一の備えの保険よりも…病気予防にお金をかける時代へ

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 あなたはスマホやパソコンのテレビ電話を使ったことがありますか。Skypeなど無料のテレビ電話アプリを使うと、海外の相手でも実質無料で顔を見ながら会話ができます。

 使う機会がない、あるいは自分には難しいと思っている人もいるかもしれません。しかしデジタルヘルスで健康の自己管理をやろうとすると、どうしても必要なスキルのひとつになってきます。

 皆さんの中には、アップルウオッチやフィットビットなどの活動量計を買った人がいるはず。腕に巻いて、歩数や消費カロリーを計測する、あれです。しかし長続きせず、机の片隅でほこりをかぶっているという人も少なくありません。

 デジタルヘルスを長続きさせ、結果を出すためには、時々医師や管理栄養士のアドバイスを受けるのが効果的なのです。しかも直接会って言葉を交わす必要はなく、スマホのテレビ電話や、LINEメッセージなどで代用可能であることが、各国の研究から明らかになってきました。ライザップの会員が、食事の写真を送ってトレーナーから評価を受けているのも、同様の効果を狙ってのことでしょう。

 日本では、生活習慣病を抱えていない限り、医者による健康指導は健康保険の対象になりません。しかし最近では、スポーツトレーナーと組んで、医学的な健康維持・増進サービスを提供してくれるクリニックが少しずつ増えてきました。もちろん自由診療ですが、医師の指導のもとに行うダイエットやトレーニングは安心感があります。医療保険やがん保険にお金をつぎ込むよりも、はるかに健康的です。

 また、スマホを使った遠隔医療も、広く普及していきます。いまは健康保険が利く項目は禁煙指導などごく限られていますが、高齢者の在宅医療推進と歩調を合わせて、今後は適用範囲が急速に増えていくはずです。患者本人がデジタルヘルス機器を使って家で数値を測定し、医者に送っておけば、外来と遜色ない診療が可能になるでしょう。

 同時に処方箋も電子化が進み、スマホで調剤薬局に送れば家まで届けてくれるようになるはずです。医療においても、スマホは高齢者のライフラインになっていくのです。これからは万一の備えの保険よりも、元気に過ごすため病気予防にお金をかける時代なのです。

永田宏

永田宏

筑波大理工学研究科修士課程修了。オリンパス光学工業、KDDI研究所、タケダライフサイエンスリサーチセンター客員研究員、鈴鹿医療科学大学医用工学部教授を歴任。オープンデータを利用して、医療介護政策の分析や、医療資源の分布等に関する研究、国民の消費動向からみた健康と疾病予防の解析などを行っている。「血液型 で分かるなりやすい病気なりにくい病気」など著書多数。

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