がんと向き合い生きていく

がん治療が終わってから子供をつくる患者はたくさんいる

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

 抗がん剤治療で治癒を目指すことになりました。しかし、その前に夫婦で相談して治療開始を数日延ばし、産婦人科のある病院で精子を保存してから治療が開始されました。

 悪性リンパ腫での抗がん剤治療は、3~4週に1回の投与を8回繰り返すスケジュールで、3回終了時にはリンパ節はほとんど消えました。この頃、同時に奥さんは体外受精が成功し、10カ月後にはかわいい女児が誕生しました。

 Rさんの治療も完遂し、5年後には悪性リンパ腫は治癒と判断されました。この間、Rさんは外来診察の時にいつも娘さんがすくすくと成長されている写真を見せてくれました。

 男性の場合、抗がん剤治療によって精子は遺伝的欠損を誘発しやすいので、少なくとも抗がん剤治療中には子供をつくらない方がいいといえます。

 また、抗がん剤治療で精子数は一時減少しますが、治療が終了してしばらくたつと数は回復することがほとんどです。

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佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

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