認知症の中で最も知られるアルツハイマー病は、病原菌によって発病するのか? そして伝染するのか――?
長年にわたり多くの研究者が疑問を持っていたものの、本格的な研究は一切されてこなかった理論が、新たな懸賞金による研究で今度こそ証明されるかもしれません。
医学誌の発行人としても知られるレスリー・ノーリンズ博士が運営する「公益法人アルツハイマーズ・ジャーム・クエスト社」は、アルツハイマー病と病原菌に関する優秀な研究に対して懸賞金を与えると発表しました。
研究者は細菌、ウイルス、菌類、寄生生物など、アルツハイマーの原因と考えられる病原菌を特定し、研究計画を提出して応募。最も説得力のある研究者には100万ドルが与えられます。
ノーリンズ博士によれば、アルツハイマーの原因が伝染するのではないかという説は数十年前から存在していました。近年では、神経学者がアルツハイマー病で死亡する確率が他の病気よりも3~4倍高いこと。また配偶者が認知症になった場合、自分も認知症になる確率は、そうでない人に比べ6倍高いとのデータもあり、多くの研究者がより進んだ研究の必要性を訴えてきました。
しかし、医学界でアルツハイマー病の原因といえば、アミロイド・ベータ(線維状のタンパク質)の蓄積が主流です。これに研究費が集中し、「病原菌説」にはほとんど注意が払われてきませんでした。
そこでノーリンズ博士は、アミロイド蓄積と病原菌、そして免疫システムが複雑に関係している可能性もあるとして、世界の関心を集めるためにほとんど私費による多額の懸賞金を与えることを決意したそうです。
もし本当に病原菌説が証明されれば、アルツハイマー病の研究に革命的な変化が起きるだけでなく、将来は病気を予防するワクチンの開発も夢ではなくなるでしょう。
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