独白 愉快な“病人”たち

筋ジストロフィーの小澤綾子さん「歌うことが生きる力に」

会社員で歌手の小沢綾子さん(C)日刊ゲンダイ

 医師は「治療法も薬もない。10年後には車椅子で、その先は……インターネットで調べてください」と言葉を濁しました。ショックだった半面、「やっと分かってくれる人がいた!」といううれしさもありました。とはいえ、当時は「車椅子になったらもうおしまいだ」と思い、夢や将来は考えられなくなりました。楽しかったはずの友達との会話に何一つ共感できなくなり、家と学校を往復するだけの毎日に……。

 復活のきっかけをくれたのはリハビリの先生です。体のストレッチだけじゃなく、同じ病気でも頑張っている人のことや、前向きに生きる大切さを話してくれました。それでも私が「どうせ治らないのに」と、あまりに後ろ向きな態度を続けていると、ある日「そうやってずっと下を向いて生きていくつもり? そんなあなたには誰も近寄らない。一人で寂しく死ぬんだね」とキレたのです。

 私は「なんてことを言うんだろう?」と憤慨しました。と同時に負けず嫌いに火がつき「この先生に“すごい”と言わせたい」と思ったんです。以後、スキューバダイビングの資格を取ったり、海外旅行、語学留学など、前向きな挑戦を毎回報告しました。先生からは「海外へ行けばいいってものじゃない」などとなかなか褒めてもらえませんでしたけど、行動を広げたことで同病の友人が増え、徐々に明るさを取り戻しました。

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