天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

心房細動の人は脳梗塞だけでなく心不全にも注意が必要

天野篤氏(C)日刊ゲンダイ

 心房細動が招く危険な病気はそれだけではありません。心不全を合併して、それが死亡の原因になるケースも多いのです。伏見AFレジストリーという心房細動のコホート研究では、心房細動患者における心血管死の最も多い死因は心不全(14・5%)だったと報告されています。

 心不全というのは病名ではなく、心臓の機能が低下し、全身に十分な血液を送り出せなくなっている状態を指します。悪化した場合は心臓の末期的な症状といえるでしょう。心房細動を起こすと、心臓のポンプ機能が徐々に徐々に衰えていき、心不全に至るのです。

 また、心房細動を起こしやすくする高血圧、糖尿病、心血管疾患などの持病は、心不全のリスク因子と重なっています。そうした原疾患が心房細動を経由して悪化し、心不全を発症するケースが多くみられます。もともと心臓を衰えさせる原疾患を抱えている人が心房細動になると、ならない人よりもさらに心臓全体の働きが落ちてしまうのです。

2 / 4 ページ

天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。

関連記事