患者が語る 糖尿病と一生付き合う法

もし私が異常な振る舞いをしていたら、それは低血糖のため

平山瑞穂氏(C)日刊ゲンダイ

 いやそれ以前に、9・11以降は機内に持ち込める荷物のチェックが厳しくなり、インスリンについても事前に航空会社に申告することが必要になっている。また、それに伴って、「ダイアベティックデータブック」なる証明書のようなものの携帯も求められる。

 かかりつけの医院が発行するもので、糖尿病患者としての基礎データやインスリンの処方などが書き込んであるのだが、背表紙には英語でこういう意味の注意書きがある。

「もし私が異常な振る舞いをしていたら、それは低血糖のためです」

 砂糖なり、それを含む飲み物なりを与えれば、10分程度で症状が改善されるはずであると書いてある。

 実際にこれが必要になる局面に立ち至ったことは今のところないのだが、この文面を改めて眺めてみると、苦笑を禁じ得ない。身をもって経験するまで正体がわからなかった「異常な言動」が、ここでも言及されているからだ。

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平山瑞穂

平山瑞穂

1968年、東京生まれ。立教大学社会学部卒業。2004年「ラス・マンチャス通信」で日本ファンタジーノベル大賞を受賞。糖尿病体験に基づく小説では「シュガーな俺」(06年)がある。

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