人は遺伝子の奴隷なのか

肥満遺伝子が多い日本人が欧米人より体が細い理由は

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 人よりたくさん食べているわけでもないのに、なぜか太ってしまう。そんな悩みを持つ日本人は少なくない。寝る前に食べたり、炭水化物好きだったりすることも一因かもしれないが、「日本人は太りやすい遺伝子を持ち合わせていることも一因」と言うのは、「日本人の遺伝子」(KADOKAWA)の著者で、国際医療福祉大学病院内科学の一石英一郎教授だ。日本人が満足に食べられるようになったのはここ100年くらいで、飢餓の時代が長かった。そんな暗黒な時代を生き延びるために、日本人には飢餓に耐えうる遺伝子が刻み込まれているという。

「たとえば、アドレナリンに関連する遺伝子『β3AR』は脂肪を燃えにくくする作用があり、この遺伝子を持っている人は、そうでない人に比べて1日当たりの基礎代謝量が200キロカロリー低く、内臓脂肪がたまりやすい。白人では8%しか持ち合わせていませんが、日本人は34%が持っているといわれています」

「PPARγ」遺伝子には安静時に新陳代謝が進まないという作用がある。欧米人では60%だが、日本人は92%が持っているという。糖分や炭水化物を細胞に取り込む働きがある「カルパイン10」遺伝子は日本人の95%が持っている。日本人は他に脂肪分解に関係し、一度太るとやせにくい体質のもとになる「β2AR」遺伝子を16%が、脂肪の代謝が悪くて太ももやヒップなどの下半身が太りやすい体質のもとになる「UCP―1」遺伝子を25%が持ち合わせている。

 最近の研究では、人にはアディポネクチン受容体が活性化することで糖や脂質の代謝が促進され、糖尿病や肥満になりにくくなる仕組みが備わっているが、日本人の半数はこの受容体が壊れているという。

 ところが、日本人は欧米人に比べて肥満になりやすい遺伝子をたくさん持っているにもかかわらず、日本人のBMI(体格指数)は欧米人に比べると低い。なぜか。

 実は、肥満遺伝子の個々の影響はごくわずかだといわれている。肥満遺伝子を持っていても、肥満になるリスクは平均で数%程度高くなるだけで、2個以上持っていても、その人が肥満になるかどうかは正確には予想することはできない。

「肥満遺伝子は100種類以上発見されており、FTO遺伝子のように変異が2つあると肥満の可能性が最大70%も増えるというものもあります。そのためメディアによっては幼児期にDNAを調べれば肥満体質がわかると騒ぎ立てますが、現時点では正しくありません。個人の体重のうち遺伝子で説明できるのは、ほんの数%にすぎません」

 実際、肥満遺伝子を持っていても、体をよく動かすなどすればFTOなどの遺伝子のスイッチをエピジェネティクスでオフにして、その影響を30%以上減らすことができるともいわれている。

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