ステージⅣがん治療を断るとどうなる

食道がん宣告から3カ月 治療なしでも体力気力に衰えなし

 私がある日突然、がんの宣告を受けてから3カ月が経とうとしている。そしてこの間、医師が提案した治療を断り、私はこれまで通りの生活を続けている。特別なことは一切していない。締め切り前は睡眠時間が3~4時間と短いのも、相変わらずだが、それでも体力的に何の問題もない。なぜ、医師の治療を断ったか? 覚悟を決めて開き直ったわけではない。医療ジャーナリストとしてのこれまでの経験から、医師の治療ではがんからは逃れられない。生活の質(QOL)が保てないと思ったからだ。

 私のがんの“発見”は7月12日朝の突然の頚部の腫れからだった。町の耳鼻咽喉科に行ったのが17日。頚部は大きく腫れ上がっていた。「深頚部膿瘍」と診断され、緊急手術のため近くの大病院に回された。そこで入院、再検査。内視鏡検査で細胞組織の採取の結果が20日に出た。医師から「病名は扁平上皮がん(食道がん)。そして進行度が最も高いステージⅣ」と宣告された。

 医師は私に次のような説明をした。

①食道の深くまで腫瘍があり、リンパ節転移も複数あるため、治療は簡単なものではない。

②根治的な治療としては、手術か放射線、あるいはその組み合わせ。

③手術の場合、食道と喉を取るので、当然ながら声を失う。食道を取り、その代わりを腸にさせるため、腸を引っ張り上げる。大変大がかりな手術で、それに耐える体力が必要になる。

④手術の代わりに放射線治療を選択した場合、放射線を1日2時間、2カ月間毎日照射。抗がん剤も併用する。

 そして医師は、このように続けた。

「放射線治療は喉を切らなくて済むメリットはある。しかし、粘膜炎がひどくなったり、唾液が出にくくなったり、味覚がおかしくなる副作用が出る。切らないとはいえ、かなり強い治療になる。しっかりした強い意志をもってやらないと、大変なことになる」

 大変なこととは亡くなるということだ。

笹川伸雄

笹川伸雄

ジャーナリスト。1946年、宮城県生まれ。医、食、健康のジャンルを得意とし、著書に「妙薬探訪」(徳間文庫)など

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