牧田ドクター「最強の食事術」Q&A

グルメ番組の「口の中で溶けそう」は悪魔のささやき

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写真はイメージ(C)PIXTA

【Q】食事に時間を費やすのはもったいないのでエナジードリンクを常用しています。問題ありますか?

【A】できるビジネスマンのように感じるかもしれませんが、私にはちっともカッコいいとは思えません。すっかり歯がなくなったお年寄りでもできることを、わざわざする理由がわかりません。

「噛まずにのみ込む」という食べ方に頼るのは体が衰退している証拠であり、危機感を抱くべき行為だと思います。

「自分の歯で噛んで食べる」は健康の基本です。

 その目的は単に食べ物を細かく砕くだけではありません。舌やのどの筋肉を動かすことで筋トレにもなりますし、噛む刺激によって脳からさまざまな指令が出されて、胃や膵臓など消化・吸収に関するすべての臓器が「食べ物が来る」準備を進めます。

「食べるときに噛まない」という行為は、こうした一連の行為、つまり筋トレや食べ物が来るためのウオーミングアップを無視することに等しいものです。

 しかも、食べ物を噛むからこそ、脳の満腹中枢が「これ以上は食べられません」というシグナルを出すことができるのです。噛まないということは、このシグナルを出すタイミングが遅れることを意味します。そうなると、知らず知らずのうちに食べ過ぎて肥満になりかねません。

 グルメ番組のリポーターが「軟らかい」「口の中で溶けるみたい」などのコメントを連発するため、こうしたコメントを食べ物の褒め言葉だと思っている人もいるかもしれません。しかし、大きな誤りです。噛まずにのみ込める食べ物は、決して健康的な食べ物ではありません。「軟らかい」「口の中で溶ける」という言葉は、悪魔のささやきぐらいに思った方が無難かもしれません。

牧田善二

牧田善二

AGE牧田クリニック院長、医学博士、糖尿病専門医。1979年、北海道大学医学部卒業。ニューヨークのロックフェラー大学医生化学講座などで糖尿病の合併症の原因とされるAGEを研究。96年から北海道大学医学部講師、2000年から久留米大学医学部教授。03年から糖尿病をはじめとした生活習慣病および肥満治療のための「AGE牧田クリニック」を東京・銀座で開院、延べ20万人以上の患者を診ている。著書に「医者が教える食事術 最強の教科書」(ダイヤモンド社)ほか、多数。

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