■生きていることが退屈な映画そのもの
一番うつがひどいときは、布団から出られませんでした。なんのやる気も起きません。幼いわが子が話しかけてくれても何も感じないんです。
うつは、脳と心をつなぐ糸が切れてしまった状態だと思います。たとえばジョークが笑えるのは、「こんな発想で、こんなゴロ合わせで今この人は笑いをつくった」と脳が理解して、それが心につながって、「面白い!」と感じるからです。でも、糸が切れていると脳で理解したものが心まで届かない。食事をしても、出汁の風味や鮮度の良さは十分わかるのに、それが「おいしい!」につながらない。とてもキレイな女性が耳元で色っぽい言葉をささやいても、ウキウキもムラムラも起きないのです。
うつの最中は、うれしいとか楽しいとか、悲しいとか憎たらしいとか、そういった“心の揺らぎ”がひとつも起こりません。
独白 愉快な“病人”たち