患者に聞け

脊柱菅狭窄症<3>手術の経験は高校2年のときの虫垂炎だけ

小俣一平氏
小俣一平氏(提供写真)

 私の脊柱管狭窄症は、第4腰椎と第5腰椎の間の椎間板にヘルニアが起きていて、下肢にいく太い神経を圧迫しているため、歩くだけで激痛が走るというものだ。

 手術は、患部に8ミリの穴を開けて、そこから7ミリの内視鏡を使ってヘルニアを切除して神経に触れないようにする。

 手術前日、午後2時に千葉県香取市にある国保小見川総合病院へ到着。すぐに担当の看護婦さんが病院内を丁寧に案内してくれる。とにかくこの病院は看護婦さんだけでなく、私が会ったどの人も驚くほど親切で、明るくて、笑顔を絶やさない。かゆいところに手が届くというのは、こういうことを言うのだと思った。香取市と同市東庄町が国民健康保険で運営している病院で、名称に「国保」の冠がついているから、健康保険が利くので治療費のほうも安心だ。

 さっそく左腕に点滴用の管を取り付けてくれたが、手術の経験は高校2年のときの虫垂炎だけだ。検診では脈拍が113で多いと言われショックを受ける。続いてスケジュール表が手渡され、説明してくれる。「手術はあす22日午前11時30分からで、病室を出てから戻るまで1時間半を予定しています」と具体的だ。これで初めて入院の実感が湧いてきた。

 その後もCTやMRIなどの各検査が行われ、糖尿病の私は薬の使い方などの諸注意を受ける。加えて「今夜から糖尿病食です」の言葉に思わず反応。

「良かった。昼にうなぎのかば焼き食べといて」と口を滑らせた瞬間、「退院後も血糖が高いと回復が遅れますから食事に気をつけてください」とピシャリ。夜はご飯少なめ、切り干し大根の酢の物、シューマイ4個、大根の味噌汁、リンゴ2切れ。あすの朝食は、手術が済むまで“お預け”ときた。

 午後9時に消灯。ベッド横の電気はつけられるので、本を読んでいるうちに眠くなった。

「小俣さ~ん、小俣さ~ん」の声で目が覚めた。深い眠りだった。11月22日午前6時40分。手術の朝がやって来た。検診では体温36度1分、血糖値188、血圧104~78、脈拍108。看護婦さんに「けさも脈拍数が多いですね」と指摘される。生まれて初めての点滴を受ける。

 午前8時半すぎ、清水純人先生が顔を見せた。「あす、祝日でも私は出てきますから、退院できますよ」とうれしいことを言ってくれる。よく冗談を言い、大きな声で笑う、気さくなお医者さんだ。先生の顔を見ただけでホッとする。

▽おまたいっぺい 1952年生まれ。武蔵野大学客員教授、元NHK社会部記者。「新聞・テレビは信頼を取り戻せるか」などの著書がある。

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