患者が語る 糖尿病と一生付き合う法

長い会議の低血糖から救ったのは持参していたゼリー飲料

平山瑞穂氏(C)日刊ゲンダイ

■管理組合の理事長になり…

 しかし、だからといって「じゃあ私が」とだれかが手を挙げてくれるほど、世の中は甘くない。

 同席していた管理会社の担当が、話を早く先に進めたいばかりに、「議事進行などは私が代行しますから」と説得にかかり始め、結局、僕は理事長の任を拝領せざるを得なくなってしまった。

 しかも悪いことは重なるもので、僕の任期中にたまたま、敷地内で電力会社が工事ミスによる火災を起こした。幸い住民に人的被害は出なかったものの、管理組合は事後処理に追われた。

 電力会社の担当者も同席する緊急理事会が何度も招集され、話が紛糾して長丁場になることもあった。ある時、まさにそのさなかに、意識が急激に散漫になっていくことに気づいた。

 放置していたら倒れてしまう。僕は仕方なく、万が一のために持参していたゼリー飲料を、その場で口に含んで急場をしのいだ。

 事情を知らない電力会社の人の目には、さぞ異様な行動に見えたことだろう。

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平山瑞穂

平山瑞穂

1968年、東京生まれ。立教大学社会学部卒業。2004年「ラス・マンチャス通信」で日本ファンタジーノベル大賞を受賞。糖尿病体験に基づく小説では「シュガーな俺」(06年)がある。

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