ニヤリと笑う。2泊3日の手術から6日目。背中に刺さった管を清水先生が抜いてくれる。MRIを見ながら「神経に当たっていたヒダは奇麗に取り除きました。こうなっていれば大丈夫、成功ですよ」。いつもの笑顔で語りかける。
いま私は5階に事務所を構えている。エレベーターもエスカレーターもない。ひたすら階段を上る。無理はしないが、66歳の年相応にせっせと歩き、動き回っている。あの痛みの日々は何だったのか。まるで他人事のように思う毎日である。
▽小俣一平(おまた・いっぺい) 1952年生まれ。武蔵野大学客員教授、元NHK社会部記者。「新聞・テレビは信頼を取り戻せるか」などの著書がある。
患者に聞け