この話を聞いた私は、Aさん(58歳・男性)のことを思い出しました。
Aさんは大きなF病院で胃がんの手術を受け、その後、外来で定期的に抗がん剤の点滴と内服治療となり、1年間がんばってきました。
しかし、がん性腹膜炎が悪化して、たまった腹水を抜くようになり、食事もあまり取れなくなって個室に入院しました。
点滴などの治療を行いましたが、病状はなかなか回復しません。そして入院してから2週間が過ぎた頃、担当医から「この分では在宅で過ごすのは無理そうなので、B病院に移ったらどうですか?」と言われたのです。
Aさんはがんに対しての積極的治療はもう無理であることを受け入れ、転院することにしました。そしてF病院を出る時、外来で知り合ったある患者から「もっと料金の高い個室に入っている患者は、病院を移れとは言われないそうだ」と聞かされたそうです。
がんと向き合い生きていく