医者も知らない医学の新常識

人の認知機能は季節によって変動 「秋」は脳が5歳若返る

写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

「五月病」といわれるように、「春先にはうつ病などが悪化しやすい」ことが広く知られています。気分の波は、季節によって大きな影響を受けるものなのです。それでは、記憶力などの脳の働き(認知機能)にも、季節による差があるのでしょうか? 

 今年の「プロス・メディシン」という医学誌に、70歳以上の高齢者の認知機能の、季節による変動を分析した論文が掲載されました。アメリカ、カナダ、フランスに住む3353人の高齢者をまとめて解析した結果、認知機能は夏から秋の時期には高まって、10月くらいがピークになり、その後は低下して、4月くらいが最も低くなる、というデータが得られました。

 しかもその差は、年齢で換算して4.8歳もあったのです。認知症の高齢者のみで見てみると、そうした傾向はあるものの、季節による変動はうんと少なくなっていました。興味深いことには、髄液のアルツハイマー病のマーカーにも、同じような季節性があって、認知症自体も季節により変動することが明らかになりました。つまり、夏から秋にかけて何か脳を刺激するものがあって、それにより脳は5歳若返っているのです。その原因は何でしょうか? 甲状腺ホルモンという説もあるのですが、今回の研究ではそれは否定をされているようです。脳の働きには季節による変動があるのなら暗記に頼るような試験は、春より秋に受けるのが正解であるようです。

石原藤樹

石原藤樹

信州大学医学部医学会大学院卒。同大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科研修を経て、1998年より「六号通り診療所」所長を務めた。日本プライマリ・ケア学会会員。日本医師会認定産業医・同認定スポーツ医。糖尿病協会療養指導医。

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