意外に知らないホルモンの実力

血糖値の調整役 膵臓からはインスリン以外の2種類も分泌

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 ホルモンのことはよく知らなくても、「インスリン」の名称は聞いたことがあるだろう。膵臓(すいぞう)から分泌され、その量が減ったり、働きが弱まったりする(インスリン抵抗性)と、糖尿病を引き起こす。

 発見されているホルモンの半数以上は、アミノ酸が連なった構造の「ペプチドホルモン」に分類されるが、インスリンはその代表格のひとつだ。

 東京都立多摩総合医療センター内分泌代謝内科の辻野元祥部長が言う。

「ご存じのようにインスリンは血糖値を下げる唯一のホルモンです。食物が分解されて血液中に増加したブドウ糖を全身の臓器細胞に取り込んだり、余ったブドウ糖を肝臓や脂肪細胞にグリコーゲンや脂肪としてため込んだりする働きがあり、結果として血糖値が下がるのです」

 膵臓には「ランゲルハンス島」と呼ばれる部分があり、そこに集まる3種類の内分泌細胞がそれぞれ異なるホルモンを分泌する。

 α細胞から出る「グルカゴン」は、血糖値が下がったときに肝臓のグリコーゲンを分解して、血糖値を上昇させる。もっとも多いβ細胞から出るのが「インスリン」。そして、この2つのホルモンの放出を抑制するのがδ(デルタ)細胞から出る「ソマトスタチン」だ。

 健康であれば、これらのホルモンが上手に作用し合い血糖値が一定にコントロールされる。それが自己免疫などによりβ細胞が破壊されてインスリンが出なくなると1型糖尿病を発症する。

 食べ過ぎや運動不足などが原因で、インスリンの分泌低下やインスリン受容体の反応低下が起こると2型糖尿病となる。

 糖尿病が悪化すると、インスリンを注射しないと血糖値が下がらない。しかし、インスリンには脂肪をため込む作用があるので、注射量が増えると太りやすくなる。

「インスリンは血中の糖分が上昇すると分泌されますが、実は食物が腸に入るとインスリンの分泌を促すホルモンが腸から出るのです。それが『インクレチン』です。血糖値を上げるグルカゴンの分泌を減らしたり、胃の動きを遅くしたり、脳に作用して食欲を抑えます。インスリンを側面からサポートしているのです」

 特にインクレチンのひとつ「GLP―1」は、類似物質が糖尿病の注射薬(GLP―1受容体作動薬)として使われている。また、経口薬のDPP―4阻害薬は、GLP―1を分解する酵素の働きを妨げる薬だ。これらはインクレチン製剤と呼ばれ、血糖値の上昇に伴ってインスリンの分泌を促すので、副作用の低血糖や体重増加が起こりにくいという。

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