人は遺伝子の奴隷なのか

性欲が制御できない…「浮気性」は遺伝子が原因?

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

「不倫」や「浮気」で人生を棒に振る中高年が目立つ。プロゴルファーのタイガー・ウッズも愛人騒動から家庭生活が崩壊し、試合にも出られない日々を送った。ハリウッドの人気俳優マイケル・ダグラスもセックス依存症を告白し、専門の病院で治療を受けた。「せっかく積み上げてきた人生なのに……」と思わずにはいられないが、制御できない性欲は遺伝子のせいかもしれないという研究がある。

 2014年、オーストラリアのクイーンズランド大学が「浮気遺伝子の発見」を発表した。男女7378人を対象にしたアンケートで「1年以内に浮気をしたことがある」と答えた女性の遺伝子を調べたところ、「AVPR1A」遺伝子に変異のある割合が平均より多かったという。浮気をした男性にはこうした傾向は見られなかった。

「日本人の遺伝子」(KADOKAWA)の著者で、国際医療福祉大学病院内科学の一石英一郎教授が言う。

「この遺伝子は脳神経で、神経伝達物質のAVP(アルギニンバソプレシン)を受け取る受容体をつくる働きがあります。ネズミの実験では、このAVPが多かったり、受容体がよく働いたりするネズミは一夫一婦制を好むことが分かっています」

“女性の方が浮気するなんて……”と眉をひそめる人もいるだろうが、世界的には珍しいことではない。ある双子研究者はその著書のなかで、匿名の調査では西欧諸国の成人の4人に1人に浮気経験があり、その割合は女性の方が高かったと報告している。この研究者は理屈からいえば、女性がダメ男の遺伝子から逃れる道を求めるのは当然だとしている。ちなみにこの研究者は双子研究から浮気性は遺伝するとし、その遺伝率はおよそ40%。これは離婚の遺伝率と同じだとしている。

 一方、AVPR1A遺伝子の特定変異RS3334を持つ男性は、離婚を何度も繰り返したり、逆に生涯独身を貫いたりするなど「結婚に向かない」割合が高いという。

 さらに、この遺伝子に変異のある人は「音楽好き」に多く見られることがフィンランドのヘルシンキ大学の研究で分かっている。浮気や不倫に走りやすい遺伝子を持ち合わせている人は音楽に興味があったり、才能があったりする場合が多いというわけだ。確かに、プロのミュージシャンに恋愛に奔放な人が多いように見受けられるのは、もしかしたら、この遺伝子が働いているからかもしれない。

 気になるのは、この遺伝子が親から子、あるいは孫に受け継がれるかだ。

「こればかりは人体実験や臨床試験が難しいために、研究結果は出ていません。けれども、奔放な有名芸能人やその子供たちが結婚と離婚を繰り返したり、不倫を重ねていたりする報道を見たり聞いたりすると、関係があるようにも思えてしまいます」(一石教授)

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