オプジーボで直腸のメラノーマが小さく 患者家族が体験談

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 オプジーボが日本で発売された2014年9月から投与を始めたのが、田村敦さん(仮名=以下同)の妻だ。残念ながら本人は事故が原因で16年7月20日、74歳で亡くなっているが、田村さんに、“オプジーボ体験談”を聞いた。

 家内のメラノーマ(悪性黒色腫)が分かったのが、14年5月。その直後の9月にオプジーボが発売されたんです。

 よく報道されている通り、オプジーボは効かない人には効かない。効く割合は20~30%。ところが家内の場合、オプジーボでみるみるがんが小さくなっていったんです。「これは家内のために発売されたようなものだ!」と喜んだものです。

 もともと家内は、直腸がんだと診断されていたんです。家内のトイレの後、変なニオイがすると感じるようになり、強く勧めて僕が行っている消化器内科を受診させたら、触診で直腸がんと診断された。僕は「治療を受けるなら経験数の多い医者に」というのが信条。がんの拠点病院なら新薬なども試してくれるだろうと考え、家内を駒込病院に入院させたんです。

 ところが開いてみたら、直腸のメラノーマで、副腎への転移もあり、もうダメだと絶望的な気持ちになりましたね。すぐに大腸外科から皮膚科に移り、主治医から治療の説明を受けました。

「ダカルバジンという抗がん剤の治療を1回だけやります。その後、新しい薬を使います」

 この時は、オプジーボという名前は出てきませんでした。薬の名前を知ったのは、画像検査で明らかにがんが小さくなっているのを確認した時です。“1回だけ”ということについても説明はありませんでしたが、長年の友人である、がん難民コーディネーターの藤野邦夫さんから「オプジーボは抗がん剤が効かない患者への2次治療が認められている。アリバイ的に1回だけ抗がん剤をやるのだろう」と聞き、納得しました。

■がんが発覚する前と変わらない生活

 通院で3週間に1回(当時、今は2週間に1回)、オプジーボを点滴で。1時間ほどかかるものの、副作用のようなものは一切ありませんでした。点滴の後にはレストランで外食をするのを楽しみにしていたほどで、ハンバーグなどを注文し、食欲が衰えることもありませんでした。自宅でも、がんと分かる前と全く変わらない生活。家内は手紙を書くのが好きで、送り先の方に合った文章を毛筆でしたためるのですが、それも楽しそうにやっていましたよ。

 家内はラッキーだった。そう思っていたんです。主治医も「よく効いている」と喜んでいました。ところが……。

 15年2月、雨の日に自宅マンションのエントランスで転倒し、大腿骨骨折を起こしたんです。そのまま救急車で自宅近くの病院に運ばれ、手術を受けました。5月に、大腿骨に入れた金属が合わず、再び手術。6月には腸閉塞を起こし、手術。骨折で一気に免疫力が下がり、さらに2度の手術でより免疫力が下がった。入院先が駒込病院とは別のところだったために、数カ月間、オプジーボ治療を中断せざるを得なかったのも大きかったのでしょう。オプジーボでがんが小さくならなくなり、16年5月には入院。6月には「オプジーボはもう効かない。抗がん剤を検討しては?」と主治医に言われました。

 家内の意思を尊重し、抗がん剤は断り、7月7日に退院。20日、眠るように息を引き取りました。骨折さえなかったら……。そう思いますが、しかし、オプジーボのおかげで、家内は抗がん剤の副作用に苦しむことなく、最期までやりたいことをして過ごせた。オプジーボには感謝しています。

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