ステージⅣがん治療を断るとどうなる

一切の治療を拒否 理由は両親のがん死で生じた医療不信

 そしてそれから数年後、脳への転移が判明し、入院。ところが脳全体に腫瘍が回っていることがわかり、手術を断念した。そして、その数カ月後、父は意識もなく、眠るように旅立ったのだ。享年67(満65歳)だった。

 医師の要請に応じ解剖すると、父の頭の中は腫瘍で埋め尽くされており、頭蓋骨をも突き破るほどだった。もともとの頭痛の原因は脳にあり、この腫瘍が鼻にまで広がったと説明されたのだ。当時としては最高と言われる医師をそろえ、最高と言われる検査と治療を受け、このざまだった。

 母をがんで亡くしたのは、その半年後だ。母は子宮も卵巣も摘出。腹水が抜けず、手足はやせ衰え、襲い来る猛烈な痛みをモルヒネでしのぎ、享年60(満58歳)で旅立った。最初は卵巣がん、そして次に子宮がんと診断されて治療を受けていた母も、医師の要請で解剖したが原因はわからず、正確な病名もつけられなかった。このとき生じた強烈な医療不信が、私に医師の治療を断らせた理由のひとつなのだ。

※寛解=症状が長期的に鎮まり、治ったように見える状態

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笹川伸雄

笹川伸雄

ジャーナリスト。1946年、宮城県生まれ。医、食、健康のジャンルを得意とし、著書に「妙薬探訪」(徳間文庫)など

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