がんとは何か

体内では毎日無数のがんが出来るのに健康でいられる理由

写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 ちなみに、獲得免疫には自然免疫と違って免疫記憶があり、異物への攻撃を終えたT細胞はメモリーT細胞として体の中に長期間存在する。はしかの病原体から作ったワクチンを打つとはしかになりにくいのは、はしかのワクチンを抗原として記憶したT細胞がメモリーT細胞となって体内にとどまる仕組みを利用しているからだ。

 免疫には、「免疫寛容」という仕組みが備わっている。免疫が自身の細胞を攻撃しないためだ。獲得免疫であるT細胞は、胸腺というところでつくられる。そこでは自分自身を異物として認識するT細胞受容体(TCR)を持つT細胞を取り除く。そうすることで自己免疫疾患を起こさないようにしている。国際医療福祉大学病院内科学の一石英一郎教授が言う。

「がん細胞が生まれると、まず自然免疫が攻撃します。NK細胞がサイトカインを浴びせたり、マクロファージが貪食したりします。そしてがん細胞に免疫応答を引き出します。そのことで獲得免疫ががん細胞の存在を認識して、さらに強力な攻撃を仕掛けるのです」

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