役に立つオモシロ医学論文

定期的なウオーキングで肺炎死亡のリスクが低下する?

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 日本人の主な死亡要因は、悪性新生物(腫瘍)、心臓病、脳卒中ですが、高齢化を迎えた現代社会においては「肺炎」も軽視できません。実際、高齢者では加齢に伴って肺炎で亡くなる方の割合が増加します。

 肺炎を予防するには、肺炎球菌ワクチン接種も重要ですが、高齢者の死亡原因となる肺炎の多くは、飲食物が誤って気管に入ることで発症する誤嚥性肺炎です。日本人高齢者を対象に行われた肺炎球菌ワクチンの研究でも、全肺炎死亡のリスク低下は明確には示されていません。

 そんな中、高齢者の肺炎死亡に関する観察研究の論文が、日本疫学会誌電子版に9月22日付で掲載されました。

 この研究は、65~79歳の日本人高齢者2万2280人を対象に、毎日の歩行状況(ウオーキング)と、肺炎死亡の関連を調査したものです。結果に影響を与えうる、年齢や性別、喫煙状況などの因子で、統計的に補正を行い解析しています。

 中央値で11.9年にわたる追跡調査の結果、心筋梗塞や脳卒中を起こしたことがない人では、1日の歩行時間が30分の人と比べて、1時間の人で肺炎死亡が10%、統計学的にも有意に少ないことが示されました。また、心筋梗塞を過去に起こした人でも同様に、1日の歩行時間が30分の人と比較して、1時間の人で肺炎死亡が34%、統計学的にも有意に少ないという結果になっています。

 もちろん1時間以上運動できる人は、もともと健康的な人であるといえますし、この結果は必ずしも因果関係を示しているわけではありません。

 しかし、適度な身体活動量が健康に良い影響をもたらすという研究報告は多数存在しています。無理のない範囲で、楽しみながらウオーキングができるといいでしょう。

青島周一

青島周一

2004年城西大学薬学部卒。保険薬局勤務を経て12年9月より中野病院(栃木県栃木市)に勤務。“薬剤師によるEBM(科学的エビデンスに基づく医療)スタイル診療支援”の確立を目指し、その実践記録を自身のブログ「薬剤師の地域医療日誌」などに書き留めている。

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