患者が語る 糖尿病と一生付き合う法

野菜補給目的の「追加」が実は…炭水化物増しの落とし穴

平山瑞穂氏
平山瑞穂氏(C)日刊ゲンダイ

 前回、大量のせんべいをおやつとして平らげて、管理栄養士さんを絶句させた患者の話をしたが、彼はそもそも、せんべいが糖質の塊だということを理解していなかった可能性もあると僕は思っている。

「血糖値」にせよ「糖質」にせよ、「糖」という文字がキーになっているところが、ある意味ではくせものなのだ。同じおやつにしても、大福などの甘い物でさえなければ、それほど量を気にしなくてもいいと思っているのかもしれない。

 甘い物以外で血糖値を急激に上昇させる食材として要注意なのは、何といっても米に代表される炭水化物の類いだ。食事療法をマスターした時に、僕はそれを繰り返し頭に叩きこまれている。

 外食でありがちな落とし穴のひとつは、肉料理などの「付け合わせの野菜」だ。野菜といっても、それがイモ類やコーンなどでは、その分パンやライスを追加して食べているのと同じことになってしまう。

「今日のサラダ」を200円で追加できると知って、野菜を補いたくて注文したのに、出てきたらポテトサラダでがっかりした、なんて経験もある。

 特に女性の間に浸透しているように見える「大豆=ヘルシー信仰」も気に掛かる。確かに大豆は健康食品なのだが、タンパク質を多く含んでいて、意外とカロリーが高いということを忘れてはならない。

 居酒屋などで同席した女性が、豆腐や湯葉を使った料理を頼んで、「野菜はこれでOK」と言わんばかりに安心しているのを見ると、「それは野菜とは違う」とたしなめたくなる。おせっかいなのは承知なので、実際には黙っているにしても。

 同じように、コンビニで前に並んでいるOLさんが、おにぎりの他に「ごろごろ野菜のナントカ」を買おうとしているのを見るたびに、僕はこんな言葉を喉元で押しとどめているのだ。

「その『ごろごろ野菜』って、カボチャやジャガイモなんじゃないの? それって炭水化物で、ご飯と一緒だから」

平山瑞穂

平山瑞穂

1968年、東京生まれ。立教大学社会学部卒業。2004年「ラス・マンチャス通信」で日本ファンタジーノベル大賞を受賞。糖尿病体験に基づく小説では「シュガーな俺」(06年)がある。

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