気鋭の医師 注目の医療

かつては半年待ち 「東大式人間ドック」はリピート率8割超

山道信毅センター長(左)と予防医学センターの人間ドックラウンジ
山道信毅センター長(左)と予防医学センターの人間ドックラウンジ(C)日刊ゲンダイ
山道信毅センター長 東京大学医学部附属病院予防医学センター(東京都文京区)

 東大病院の「人間ドック」を提供する検診部が今年4月に「予防医学センター」と改組された。それに伴い9月にセンターの場所を移転。入院棟Bの最上階(15階)のワンフロア(1500平方メートル)を使い、上野・不忍池を見下ろす眺望を楽しみながら検査を受けられるのがウリのひとつになっている。

 これまで「治療医学」と「研究」をメインとしてきた東大病院が旧検査部で人間ドックを始めたのは、意外と新しく2007年から。

 超高齢化社会への時代の移り変わりと共にニーズが高まる「予防医学」も充実させる必要があったからだ。

 同センターの設置により、どう機能が強化されたのか。山道信毅センター長(写真)が言う。

「当初から人間ドックの人気が高かったのですが、以前はスペースの問題で受診者が内視鏡やレントゲンなど各検査を受ける際に部屋の移動が多かったのです。それで1日12人しか対応できず、受診の“待ち”が半年先という状況でした。いまは基本検診のすべてをワンフロア内に集約し、オプション検診も可能な限り同フロア内で行えるようにしています」

 スタートしたばかりの現在は試験的に1日16人対応だが、段階的に来春までに受診枠を1日25人まで増やすという。これまで人間ドックの受診者は年間3000人弱だったので、来春以降は年間約6000人に増える計算になる。

 基本検診は、「血液検査」をはじめ「骨密度」「胸部X線」「腹部エコー」「胃カメラ」など16項目。午前中に終了し、7万2900円(税込み)。オプション検診は、「心血管ドック」「脳血管ドック」「肺がん検診」「乳がん検診」など8種類のメニューが用意されている。

■異常があれば当日に専門科へ紹介

 人間ドックで重視している点は「がんの早期発見」と「生活習慣病の予防・是正」で、他院と大きな差はない。しかし、「東大ブランド」があるとしても、なぜ人気が高いのか。受診者の8割はリピーターで、半数は検査終了時に翌年の予約を入れていくという。

「受診者にとって最も期待度が大きいのは、病院の各診療科との連携と考えています。当日の結果説明の医師との面談時間は原則15分。検診で異常があれば、当日に専門科への紹介状を作成し、予約もできますし、オプション検査の追加も可能です。また、しっかりとした問診を行うため、人間ドック項目とは別の体調不良をご相談いただく場合もありますが、全身の診察を行う際に、こうした相談にも丁寧に対応しています」

 加えて、医師への「後日相談」(原則1回、15分)や管理栄養士による「栄養相談」も無料で行っている。

 また、リピーターが多いことから、その蓄積した受診者データを今後の研究に役立たせることも同センターの役割のひとつという。たとえば10年後に発症したがんの兆候が過去のデータの中に隠れている可能性がある。大規模データを比較・解析することで、まだ知られていない病気の予測因子を発見できるかもしれないのだ。

「オプションの脳血管ドックも人気が高く、受診者の2割くらいが希望されます。この脳MRIの画像データを数値化して体の病気予想につなげる研究が、理化学研究所や他の医療機関との共同研究の形で進んでいます」

▽1997年東京大学医学部卒。亀田総合病院、東京大学医科学研究所を経て東京大学医学部付属病院・消化器内科。16年医局長、18年から准教授(予防医学センター長兼務)〈所属学会〉日本消化器病学会、日本癌学会、日本消化器がん検診学会など。

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