病を治すということは、健康な体を取り戻すということにほかならない。アナウンサーの故・逸見政孝さんの例を引き合いに出すまでもなく、がんは“寛解”したが当の本人は亡くなった――という事例は枚挙にいとまがない。私は取材で、同じような例をいくつも耳にした。医師はこう言う。
「手術はうまくいった」
「治療は順調にいっている」
「あとは体力との勝負だ。気を強くして頑張ってください」
これは、治療後の健康は患者の自己責任だと言っているようなものだ。このように、がん患者の多くはがんと闘っているのではない。過酷ながん治療に耐え、治療の副作用、そしてその治療によって起こる筋力、免疫力、代謝力の低下によって引き起こされるさまざまな合併症と闘い、そして力尽きていくのだ。
私はがんを宣告されて、即座に医師の治療を断った。そこにはなんの迷いも不安もなかった。
ステージⅣがん治療を断るとどうなる