かなり前のことになりますが、白血病と肺炎と診断された九州出身の40代の男性患者が、酸素吸入を受けながら私が勤める病院に救急車で運ばれてきました。末梢血液の標本を見ると、以前に国立がんセンターで見たものとそっくりの異常細胞があり、HTLV―1抗体は陽性でATLの診断がつきました。両側の肺X線写真は真っ白で、真菌の一種の感染によるカリニ肺炎といわれるものでした。結局、治療の甲斐もなく呼吸困難が増強して、残念ながら5日後に亡くなられました。
患者の姉であるCさんにその病気を説明したところ、「私も検査して欲しい」と希望され、すぐに採血をしました。その結果、HTLV―1抗体は陽性でしたが、ATLは発病していませんでした。
それから数年後、驚いたことにCさんは頚部のリンパ節が腫れ、ある病院で「悪性リンパ腫」との診断を受け、私のところに紹介されてきました。ATLがリンパ腫のタイプで発病したのです。Cさんは頑張って闘病されましたが、治療の効果はなかなか得られず残念な結果となりました。
がんと向き合い生きていく