独白 愉快な“病人”たち

ポリープ手術中に麻酔が切れて 水野麻里さん"地獄”を語る

水野麻里さん
水野麻里さん(C)日刊ゲンダイ

 この夏、9日間の入院をしました。大腸ポリープを1つ取る手術で1泊の予定だったんですけど、なかなか退院できなくて、やることがないからスマホで映画などを見ていたら、あとからパケット代が高額でびっくりしました(笑い)。

 ポリープがわかったのは、年に1回の健康診断の検便です。その頃、排便のときに鮮血が出ていたので「おかしいな」とは思っていたんです。でも「下痢で腸が荒れているのかな」くらいに考えていました。なぜなら、去年ちょっと下血したときがあり、地元の胃腸病院を受診したら「なんでもない」と言われたからです。でも結局、今年の健診で引っかかり、大腸内視鏡検査となったわけです。

「もしポリープがあったら、そのまま取るので1泊入院の準備をしてきてください」と言われて検査を受けました。すると、S状結腸にポリープが見つかり、そのまま手術。あとから聞いた話では、形がいわゆるキノコ形のポリープではなく、丘のような円錐形だったので、ワイヤを引っ掛けて取ることができず、大きく丸く切ってホチキスでプチプチ留めたとのことでした。

 その手術が“地獄”だったんです。想定外の形だったせいか、手術の途中で麻酔が切れてしまって、ものすごい痛みに襲われました。そばにいた看護師さんの手を爪痕が残るほど必死で掴んで「助けて!」と何度も言い、「麻酔を追加して!」と叫び続けました。追加された麻酔が効いてきた頃には手術は終わりかけていましたけどね。おかげさまで、その後はぐっすり眠りました。

 腸のホチキスが外れないよう、翌日から歩くことはもちろん、お腹に力を入れてもいけないと言われ、安静を強いられました。おまけに水しか飲んではいけないのです。

 点滴は24時間つけっぱなしでしたが、腸を刺激しない水に近いもの。赤ちゃんはミルクだけでもウンチが出るので、点滴でも栄養が豊富だと腸を刺激するんでしょうね。数日して流動食が出て、その後の便に潜血反応がなければ退院だったのですが、流動食ではなかなかお通じもなくて、やっと出たときには大量下血……。再び水しか飲めない数日を過ごしました。

 その後、2度目の流動食が出たときは、便秘を回避するため、いつもは手を付けない牛乳を飲みました。何を隠そう、私、牛乳で下痢するタイプなのです(笑い)。作戦は大成功。ただ、血が混じってないことを看護師さんに目視してもらうのがちょっとね(笑い)。でも、晴れて退院することができました。

 病理検査の結果は、がんになる一歩手前のポリープだったそうです。大きさからいって、去年下血した頃にはすでにあった可能性が高いとのことでしたが、突起がなかったので発見は難しかったようです。でもまぁ、がんの手前で見つかってよかったと思いました。

■入院は通算12回、手術が6回

 子供の頃から体が弱く、入院は通算12回以上を数えます。手術も扁桃摘出、卵巣嚢腫、子宮筋腫など今回で6回目です。だからというわけではありませんが、手術は特に怖くありません。術後は日に日に薄紙を剥ぐように治っていくから希望が持てるし、死んじゃうにしても手術中なら知らないうちに死ねますしね(笑い)。病気は怖いし、痛くて苦しむのは嫌ですけど、手術で治るうちに見つかった病気なら、それは「よかった」って思うんです。

 2015年に経験した未破裂動脈瘤もまさにそうでした。がん家系なので、用心のため自費で全身の腫瘍マーカー検査をしたときに、オプションの「脳のMRI」になぜか目が留まって追加したのが幸運でした。破裂寸前の鏡餅みたいな2段に膨らんだ動脈瘤が見つかって、開頭クリッピング手術をしたんです。その時も特別怖いとは思いませんでした。翌日には歩いていましたし、10日で退院しました。髪付きのまま頭皮を剥がしたので、ボウズ頭にもなりませんでしたしね(笑い)。 病気から学んだことは「1人の医者のいうことだけを信じるな」かな。セカンドオピニオンはとても大事です。納得できなかったら、次の先生を探したほうがいい。ネットの評判ではなく、まずは町で評判のいい医師にかかることがお勧め。「人として」じゃなく「能力」のある医師ね。そうでないと発見が遅れちゃうから。

「たぶん大丈夫」なんていう自己判断でズルズルするのが一番ダメ。私は病気をたくさんしてきましたが、“早め早め”が功を奏しています。とはいえ毎日ワインを1本飲んでいるので、かかりつけ医には叱られていますけど……(笑い)。

 =聞き手・松永詠美子

▽みずの・まり 1959年、愛知県生まれ。大学卒業後、放送作家として「元気が出るテレビ」(日本テレビ)や「オールナイトニッポン」(ニッポン放送)などの企画構成に携わる。その後、1992年の「セカンド・ヴァージン症候群」(講談社)をはじめ小説やエッセーを多数執筆し、エッセーや小説の書き方講座の講師も担当。FM熱海湯河原では「まりまり&ホタルの夢見る頃は過ぎたけどさ」のパーソナリティーも務めている。

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