役に立つオモシロ医学論文

手洗いが難しい保育園児の風邪予防はアルコール消毒が有効

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 風邪の原因となるウイルスやインフルエンザウイルスは、手指を介して感染します。風邪やインフルエンザの予防に手洗い(手指衛生)が有効だといわれるのはこのためです。とはいえ、小さなお子さんはひとりで手洗いすることが難しく、十分な手指衛生ができないことも多いでしょう。

 小児の手指衛生と呼吸器感染症の発症リスクを検討した論文が、米国小児科学会誌電子版に18年10月8日付で掲載されました。

 この研究では保育園に通う0~3歳の911人が対象になり、手指衛生に関する指導とせっけん手洗いを行う群274人、手指衛生に関する指導と手指のアルコール消毒を行う群339人、指導なしで通常の手洗いのみを行う群298人の3グループにランダムに振り分けられています。8カ月の追跡を行い、呼吸器感染症の発症頻度が比較されました。

 解析の結果、呼吸器感染症の発症リスクは通常の手洗いのみの群と比べて、手指のアルコール消毒を行った群で23%、統計学的にも有意に低下しました。他方、せっけん手洗いを行った群では、手指のアルコール消毒を行った群に比べて21%、統計学的にも有意に高いことが示されました。

 消毒用のエタノール製品には、手荒れ対策に配慮されたジェルタイプも発売されており、こうした製品は小さなお子さんでも使用可能です。保育園に通っている3歳未満のお子さんには、エタノールを含有した消毒剤による手指衛生が風邪対策としておすすめできるかもしれません。

 ただし、ノロウイルスなど感染性胃腸炎を引き起こすウイルスに対してはアルコール消毒の効果は明確ではありません。感染性の胃腸炎予防には、やはりせっけん手洗いが基本となるでしょう。

青島周一

青島周一

2004年城西大学薬学部卒。保険薬局勤務を経て12年9月より中野病院(栃木県栃木市)に勤務。“薬剤師によるEBM(科学的エビデンスに基づく医療)スタイル診療支援”の確立を目指し、その実践記録を自身のブログ「薬剤師の地域医療日誌」などに書き留めている。

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