Dr.中川のみんなで越えるがんの壁

内山信二さんに“余命5年宣告” 大腸のポリープとがんを知る

タレントの内山信二さん
タレントの内山信二さん(C)日刊ゲンダイ

 オレは、がんなのか……。検診や人間ドックなどで大腸ポリープを指摘されたら、そんなふうにショックを受ける人は少なくないでしょう。タレントの内山信二さん(37)は、テレビ番組の企画で大腸内視鏡検査を受けたところ、大腸ポリープが5つ見つかり、番組の医師団に「余命5年」を宣告されたそうです。今回は、ポリープについて解説しましょう。

 ポリープは、粘膜から隆起したイボのような突起物のことで、鼻タケもポリープのひとつ。大腸はもちろん、胃や十二指腸、すい臓などにもできます。状態を表す医学用語で、必ずしも病気ということではありませんが、一部にはがん化する恐れがあるのは事実です。

 一般の人にとっては、そこが不安になる要因。医師にとってもがんになるタイプかどうかを見分けることはとても重要です。

 では、大腸がんになるポリープは何かというと、腺腫がそれ。大腸ポリープのうち8割を占め、特に肛門に近い直腸やS状結腸にできやすいのが特徴です。8割はかなりの割合ですが、がんになるのはごく一部であることが分かっています。

 見分けるポイントは大きさです。「5ミリ未満」は0・6%、「5ミリ以上9ミリ未満」は7%、「10ミリ以上19ミリ未満」は24・6%、「20ミリ以上」は35・8%と腺腫の直径が1センチを超えると、がんの確率が急上昇します。

 大腸がんは早期に治療すればほとんど治ることから、5ミリ以上が摘出対象とされていますが、1センチでもがん化の確率は25%程度と4人に1人の割合です。切除は、内視鏡で行います。

 そのポリープががんだとしても、突起物のポリープで発見できたなら、それは早期。進行がんになると、突起ではなくなるのでポリープとは呼ばれません。ですから、ポリープの診断なら、根治が期待できます。テレビ番組で、血糖値や尿酸値などの異常も含めた判断とはいえ、「余命5年宣告」は脅しが過ぎたかもしれません。

 検診でよく指摘される胃のポリープについても触れておきます。胃ポリープは、「過形成ポリープ、胃底腺ポリープ、特殊型」の3つで、過形成ポリープと胃底腺ポリープが重要です。どちらががん化するかというと、過形成ポリープです。

 過形成ポリープは、ピロリ菌に感染していて、萎縮性胃炎を伴います。直径2センチ以上は、がん化のリスクを減らすため切除の対象ですが、過形成ポリープを防ぐためにもピロリ菌の除菌は効果的といえます。

 胃底腺ポリープは、ピロリ菌の感染はなく、萎縮性胃炎も伴わず、がん化の恐れもほとんどありません。ですから処置は不要です。胸やけの原因の胃食道逆流症の人は、プロトンポンプ阻害薬を処方されます。その薬を飲んでいると、胃底腺ポリープになることがありますが、がん化の心配はまずありません。

中川恵一

中川恵一

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。

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